横浜DeNAの筒香は泥沼決戦で4安打2打点。真っ黒になって転倒してもバットを濡らさないように守った(資料写真・黒田史夫)

雨天強行となった甲子園の泥沼決戦を制してCSファイナルステージ進出に逆王手をかけたのは横浜DeNAだった。13-6。7回無死一、三塁からの勝ち越しタイムリーを含む4安打2打点でチームを牽引したのが4番・筒香嘉智(25)である。鬼気迫る形相でベンチに火をつけた打席があった。

 3-3のスコアで迎えた5回二死一塁。石崎の2球目が顔付近を襲った。大きくのけぞって、そのボールを避けた筒香は、勢い余ってドロドロになっていたファウルグラウンドで転倒した。左半身は、まるで泥パックでもしたように真っ黒に汚れた。このとき、筒香はバットを、その泥沼の土につけないように浮かせたままだった。片手でおそらく本能でバットを最後まで守ったがゆえ転倒してしまったのである。

 評論家の池田親興さんは、その姿が「刀を守るサムライの姿と重なった」という。

「バットを絶対に泥沼につけないように守ったよね。サムライだよ。耐え難い怒りを必死に抑えて、その怒りを、あの打席、ヒットに変えた。ファウルを続けたフルスイングは、鬼気迫るものがあった。横浜DeNAのメンバーは、そのチームリーダー、筒香の姿に燃えたんだと思う。精神論を語りたくはないが、泥沼の勝負で大きな差がついたのは、あの筒香の打席にあったと思う」

 筒香のバット選びへのこだわりは半端ではない。バット工場へ直接、出向き、感触を確かめ、魂を感じることのできるバットを選ぶ。だから、まるで命を守るかのようにバットを守った。

 立ち上がった筒香は、こみ上げる怒りを沈静化させるかのように、ゆっくりとベンチへ歩いた。本当ならばズボンも履き替えたかったに違いないが、ベンチで左手の手袋とプロテクターを外してから、泥を拭い、もう一度、打席へと戻った。

 筒香の表情は、一変していた。ボール3となってから、多少ボール球でも、構わずフルスイング。4球連続でファウルを打つと、最後も高めのボールくさいツーシームを強引に、一、二塁間に引っ張って、続く宮崎のタイムリーにつなげた。

「戦いなんで、遊びごとじゃない。向こう(石崎)も一緒。本気できている、こっちも本気だぞ、ということです」

 試合は、阪神の執念のスクイズで再び振り出しに戻ったが、7回、梶谷の本来ならファウルになる一塁線のゴロが、泥に絡まりフェアグラウンドに止まり、梅野の悪送球を誘った。梶谷は二塁を陥れ、ロペスがつなぎ、無死一、三塁となって筒香が勝ち越しライムリーをライト前へフルスイングで弾き返した。
 
「梶谷さんが、ああやって出て、ロペスにつないでもらった。僕が返すしかないと。コンディションは、相手も一緒。自分たちの野球やろうと、言い合って試合に入った。雰囲気は重たくなかった。勝つしかない、勝つためだけだった」

 雨中決戦で21安打13得点を奪った横浜DeNAの集中力の源は間違いなく若きリーダーだった。

 きょう16日の天気予報は、また降水確率60%と悪いが、初戦で完封負けしたムードは完全に払拭した。グチャグチャのグラウンドでもぎとった勝利で、横浜DeNAは目に見えない勢いを手にした。

「もう勝つしかない。明日勝って、広島(ファイナルステージ進出)を決めれるようにがんがる」

 初戦で沈黙していた筒香も覚醒した。
 1勝1敗。引き分けならば阪神がファイナルステージに進出するため、横浜DeNAは勝つしかない。その下克上を牽引するのは、もちろん、泥水から守った“サムライ筒香”のバットである。阪神は能見、横浜DeNAはウィーランドの先発が予想されている。

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