日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。


【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第4回

鉄条網で自由を失ったラクダたち。20キロ先に見える柳林にいきたいと思っているのだろうかと勝手に想像した=シリンゴル盟・シローンフブートチャガン・ホショー(2015年4月撮影)

 ある日、妻と一緒に、彼女の実家が飼っているラクダを見に行くことにした。彼女の家族が持っている牧草地を目指し、歩いた。いくつかの鉄条網をくぐって、40分ぐらい歩いたら、すこし離れた小丘の上でラクダの群れが見えた。

 彼女は、そこがおそらく実家の牧草地で、自分たちのラクダだ、といった。牧草地が狭くなったことで、この辺りでは他にラクダを飼っている遊牧民はいないからだ。

 ラクダは、私たちをあまり警戒しなかった。最近の家畜は、鉄条網に囲まれているせいか、本来の野性を失い、馬鹿みたいにおとなしくなってしまった。

 何頭かのラクダの足には『シュドル』が付けられていた。シュドルというのは牛革の紐で作った足かせで、馬に用いるものだ。普通は、馬の前足2本と後足1本をしばる。そうすると馬は遠く行けないし、高く飛べない。
 
 なぜ、シュドルをラクダに使用しているのか。意外な理由があった。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第4回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。