インディアナポリス大会で勝利を確信した室屋(Joerg Mitter / Red Bull Content Pool)

最高時速370キロで争い「空のF1」と呼ばれるレッドブル・エアレースで、アジア人として初の総合チャンピオンに輝いた室屋義秀(44)が19日、最終戦が行われた米国より凱旋帰国して都内のレッドブルスタジオ東京ホールで優勝報告会見を行った。2009年に初参戦して以来、8年目にしての快挙達成だ。

「嬉しいのですが、うまく言えないんです。ただ優勝しようと本気で思ってやってきた。2016年に初優勝(千葉大会)してから、チームの実力、自分のコントロールも含めて、総合優勝が近づいているという感覚はあった。そのプロセスは合っているだろうと。それがトロフィーに変わるか、どうかは、時の運もあり、いつ来るかはわからないが、近い位置にいく実力を備えているという実感はあった。最後は運もあった」

 いくつもの奇跡が重なっての総合Vだった。

 レッドブル・エアレースは、全世界から選りすぐりの14人のパイロットが、世界8箇所を転戦して、総合のポイントを争い、年間の総合チャンピオンを決める競技だが、この日の会見では、室屋は、第1戦から第8戦までのダイジェスト映像を見ながら、総合Vの軌跡をたどった。

 今シーズン、開幕のアブダビ(UAE)はエンジントラブルに巻き込まれたが、第2戦のサンディエゴ(米国)、ホーム開催となった第3戦の千葉大会で連勝、総合Vへの土台を固めた。

 だが、実のところ「2連勝してから調子を崩していた。スケジュールが過密になり、トレーニングができず、調整がしきれず、テンポが狂いはじめた。下っている感じがした」という。

 それでも第4戦のブタペスト(ハンガリー)では3位に入り前半戦をポイントトップで折り返した。

 しかし、ロシアでの初開催となった第5戦のカザンでは、悪天候もあって集中力が途切れて13位に終わり獲得ポイントはゼロ。そして第6戦のポルト(ポルトガル)では衝撃のアクシデントに襲われた。レース前に機体のフレームにひび割れがあることが発覚したのである。

「野外整備は無理。工場に持ち込まないと修理ができない状況だった」

 ポルト大会どころか、その次のラウジッツ(ドイツ)もキャンセルせざるをえない最大の危機。総合Vの夢は遠のきかけた。だが、奇跡が起きる。

 室屋の緊急事態を知った他チームの優秀なメカニックが集結してくれた。修理に必要な部品もすべて揃う。まる2日、徹夜の修理作業。終わったのが予選レースが始まる1時間半前だった。練習はたった1分間飛んだだけのぶっつけ本番となったが、予選は3位。そして翌日の決勝日のラウンドオブ8(準決勝)では、総合V争いの最大のライバル、マーティン・ソンカ(チェコ)との直接対決が実現することになった。レッドブル・エアレースは、4機がタイムを争う決勝のファイナル4までは、1対1の勝ち抜き方式のタイムレースである。

「後半戦の天王山。大勝負という感じだった」

 だが、スタートに失敗、1秒のペナルティを課せられ敗れた。優勝はソンカ、室屋は6位で5ポイント。
「チャンピオンシップは遠くなったなと思った」 
 自力Vの目は、ここで一度は潰えた。