写真:松尾/アフロスポーツ

フィギュアスケートのグランプリシリーズ、ロシア杯が21日、モスクワで行われ、男子フリーに羽生結弦(22、ANA)が登場、その冒頭で4種類目の4回転ジャンプとなる大技、4回転ルッツを成功させた。ショートでは、転倒などもあり2位スタート。逆転を狙ってフリートップの195・92点をマークしたものの、計290・77点で2位に終わった。確かにミスもあったが、基礎点の高い4回転ルッツの成功は、平昌五輪へ向けての大きな収穫となった。

 フリーの冒頭。羽生は、新技の4回転ルッツにトライした。着氷は少し崩れ、膝を曲げてなんとか耐える形になったが、成功は認められ「1・14点」のGOE(出来栄え点)が加わった。

 羽生自身は、「完璧なジャンプではない。緊張はしましたが、回転しきったことは良かった。完成度をあげて、これを1つのステップとしてやっていけたらいい」と、反省と手ごたえを口にした。

 元全日本2位で現在後身の指導にあたっている中庭健介さんは、「羽生選手のルッツの成功には驚かされました。回転が凄くいい。回り過ぎて、逆に着氷をこらえる形になりましたが、おそらく普段から練習を積み、飛び慣れているから、ああいう対応ができるのでしょう。初ジャンプを試合に取り入れる場合は、ついつい力みや緊張から、構えなどの予備動作が大きくなり、演技の流れを損なうものですが、そういう無駄な動きがなく、非常にスムーズな入りで飛んでいました。モノになったと見ていいでしょう」と高く評価した。

 そもそも、なぜルッツジャンプは難しいのか。

「ルッツジャンプは(反時計回りに回る選手の場合)、左足のアウトエッジでカーブを描きながら滑り、飛び出すという動きと、ジャンプの反時計回りの回転の動きが、逆になるので非常に難しく、選手もイメージをつかみにくい。また、あらかじめ回転を氷の上で作り過ぎると、インサイドエッジに乗ってしまうミスも起こります。ルッツジャンプをインサイドで飛んでしまう選手が多いのもこのためです。アクセルに次いで基礎点が高く設定されているのも納得いきます」とは、中庭氏の説明。

 4回転ジャンプの基礎点を順番に並べると、トゥループが「10.3」、サルコーが「10.5」、ループが「12.0」、フリップが「12.3」、ルッツが「13.6」となっている。

 それだけの難しいジャンプだけに悪影響も出る。

「ルッツに今回は集中していたこともあって練習が足りないなと思った」と羽生。

 その後の4回転ループが3回転になり、4回転サルコーから3回転トゥーループにつなげるジャンプが、コンビネーションにできず、4回転トゥーループからの3連続ジャンプが、2回転トゥーループになるなどミスが続き、中庭氏も、「ルッツの負担と無縁ではないでしょう」と見た。

 しかし五輪シーズンのスタートに4回転ルッツという“武器”を成功した意義は大きい。

 会見で、その意義を問われ、羽生も、「試合で決められたことが大きいです。イメージがつきますし、そのおかげで、これから、いろんなところに着手しています」と、笑顔で答えた。

 中庭氏は、その成功の意義をこう解説する。

「4回転ルッツという最も難易度の高いジャンプを身につけたことの意義は大きい。単純に4回転ルッツの高い基礎点により、ポイントがアップするだけでなく、おそらく他のライバル選手が脅威を覚え、今以上のプレッシャーがかかることになります。そういう心理的なヒエラルキーが生まれると、ミスにつながりますし、野球に、例えれば、クライマックスシリーズの序盤苦しんだソフトバンクに故障している柳田悠岐が加わるようなもの。平昌五輪に向けて、それくらいの大きな武器になるでしょう」

 “真4回転時代”に少し遅れをとっていた羽生が大切な五輪シーズンに4回転ルッツという大技を成功させて一歩も二歩もリードした。しかし、「自分の本来の演技内容ではないので悔しい思いがあります。まだまだとも思います。これから努力を重ねていかないといけない。悔しい思いと、収穫の両方があったので、これからもっと成長していけると思いますし、どんどんつなげていきたい」と、羽生は足元をみつめる。
 次戦は、11月のNHK杯。そこでは今季初優勝を飾りたい。

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