「まるでホーン奏者のようにギターを弾く」若者

 ジョン・ハモンドが、ピアノのメリー・ルー・ウイリアムズから聞いた話を確かめるべく向かった先は、オクラホマシティーであった。メリー・ルーによれば、そこのリッツ・カフェに行けば、アコースティック・ギターのようにエレキ・ギターを弾く若者がいるという。ハモンドがオクラホマシティーに着いたその晩、早速リッツ・カフェにメンバーが集められ、その若者の演奏を聴いた瞬間、ハモンドの身体に電撃が走るように、「こいつは間違いなく大物だ」と直感したという。「まるでホーン奏者のようにギターを弾く。こんなギター奏者は、他にいない」

 ジャズ・ギターの開祖と言われるチャーリー・クリスチャンの演奏の印象は、ホーン奏者のようにギターを弾くということで、ほぼ皆一致している。実際、クリスチャンは、サックスやトランペットの花形ミュージシャンになりたいために音楽の道を選んだ人だった。ところがサックスには空きがないとか、いろんな理由で、結局はエレキ・ギターを手にすることになってしまったのだ。ハモンドは、クリスチャンの演奏には、ベン・ウェブスターやハーシャル・エバンスといったテキサス・テナーの影響があるとし、自分はこうした黒人音楽が大好きなんだとも言っている。とても分かりやすい直観力とも言えるが、ハモンドがすごいのは、その後の行動の速さである。

 ハモンドは、早速クリスチャンを連れて、ベニー・グッドマンの公演と録音が予定されているロスアンゼルスに飛ぶ。そして、ライブ会場に強引にギター・アンプとスピーカーを勝手に運び込んだのである。もともとエレキ・ギターなんてと思っているグッドマンは、凍り付くような視線でハモンドを睨み付ける。さらに、それではということで、嫌がらせに、西海岸ではお馴染みだけど、オクラホマではまだ知られてないだろうと思う「ローズ・ルーム」という曲からステージが開始された。ハモンドは、クリスチャンほどの才人なら、一度耳にすれば大丈夫と思っていたそうだが、しかし、この曲は、すでにオクラホマでもよく演奏されていた曲だったという説もある。いずれにしても、この最初のグッドマン・グループでの演奏は、ヴィブラフォンのライオネル・ハンプトンを始め、全員がノリにノリ、何と40分にも及ぶ演奏になって会場は大いに沸いたという。