広島ナインは横浜DeNAのCS突破セレモニーを悔しそうに見つめた

ペナントレースでは横浜DeNAに14.5差をつけて優勝した広島が、クライマックスシリーズのファイナルステージで、初戦を制した後に4連敗して2年連続の日本シリーズ進出を逃した。雨で2試合が流れ、第4戦、第5戦は先手を取りながら「逆転の広島」のお株を横浜DeNAに奪われて逆転負けを喫した。

 広島でのコーチ経験もあり、ヤクルト、西武監督時代には“日本一監督”となった名将、広岡達朗氏は、今回のCS敗因をこう分析した。

「横浜DeNAに大きなゲーム差もつけて優勝した広島が、何もできずに完敗したことは、“ふ”に落ちないが、考えられる敗因はいくつかある。ひとつはゲーム勘。ギリギリまで巨人との3位争い、阪神との2位争いを繰り広げて、阪神とのCSファーストステージから勝ち上がってきた横浜DeNAは、ゲーム慣れして、打線に勢いがあったが、広島は試合間隔があき、しかも、2試合も雨天中止となりゲーム勘がまったくなくなっていた」

 広岡氏が、その象徴的な場面として取り上げるのが、23日の第4戦で6回無死満塁の場面で、横浜DeNAの三上朋也に対して、勝負の代打攻勢を賭けた岩本貴裕、小窪哲也が連続三振に終わったシーンだ。

「2人とも、とんでもないボール球を振った。本来ならば、ボールを見送り、逆に三上に投げるボールをなくさせて仕留める場面。広島の打者は、それができる。シーズン中は、あえて石井打撃コーチがゴロを打たせて、最低1点は取っていたが、それもできなかった。ゲーム勘がないからそうなる」

 また24日の第5戦では、三塁走者の菊池が、スタートのタイミングを誤り、ダブルスチールに失敗したが、これも、広岡氏、いわく「ゲーム勘の鈍りの最たるものだ」という。
 
 広島は、CSファイナルステージに向けてゲーム勘を取り戻すため、紅白戦や社会人チームとの練習試合などを行っていたが、広岡氏に言わせると、準備不足だという。

「メンバー全員を泊まりこませ野球漬けとする合宿を張れば良かったのではないか。西武時代に私は日本シリーズ前に合宿を張らせたことがある。そういう意味では、準備不足。そして、もうひとつの敗因が、CS前に、石井、河田の両コーチの退団を発表したこと。どういう事情があったかは知らないが、チームの士気に間違いなく影響を与えた。なぜCS、日本シリーズの戦いが終わるまで人事を伏せておかなかったのか。“そんなことは関係ない”と思う人もいるかもしれないが、野球はチームスポーツ。特に短期決戦の中では、こういうほころびは、影響を与えるのだ」

「逆転の広島」と呼ばれるほどに、広島打線を変革させた石井琢朗打撃コーチ、機動力部門を支えた河田雄祐外野守備走塁コーチが、シーズン終了後の10月5日に家庭の事情を理由に辞任が申し入れ、退団することが発表された。2人は、共に東京に家族を残しての単身赴任だった。球団側は、今後の2人の“就職活動”に配慮して早めに発表したようだが、広岡氏は、CS、日本シリーズと戦いがすべて終わってから発表すべきだったと広島のチーム管理の不備を厳しく批判した。まとまりや信頼の部分でヒビが入るという。打線が爆発力に欠いた原因には、石井打撃コーチへの信頼が薄くなったことも影響しているともいう。

 そして、“元日本一監督”は、広島が来季以降、日本一を奪回するために、こんな注文をつける。

「連日、マツダスタジアムは真っ赤に染まっていた。私たちの時代と違い、間違いなくファンがチームを育てる時代。独走優勝して勝って当たり前のチームが本拠地で惨敗したのだから、“よくやった”、ではなく、もっと厳しい声をあげてもらいたい。これが、ヤンキースやレッドソックスなら大ブーイングですよ。カープ女子といわれる人たちが、ブーイングをあげてこそ、チームも育つんだと思う」

 4連敗を喫したマツダスタジアムはシーンと静まりかえっていたが、モノが放り込まれたり、ブーイングが起きるようなことは、一切なかった。それもよき広島カープファンのモラルとカラーだとも思うが、球界の大御所の意見に耳を傾けてみる価値もあるのかもしれない。

(文責・駒沢悟/スポーツライター)