日本の鉄道インフラ輸出のお手本とされてきた日立製作所の鉄道車両が、お披露目の初日に、客室をずぶ濡れにするというトラブルを起こしてしまいました。英国の鉄道事業は日立が総力を挙げて取り組んでいるビジネスですが、大丈夫なのでしょうか。

英サウサンプトンに到着した日立高速鉄道向け新型車両(写真:2015年3月=Splash/アフロ)

 トラブルを起こしたのは、イギリス南西部にあるブリストル・テンプル・ミーズ発ロンドン行きの電車で、トラブルがあった10月16日は営業運転開始ということで、英国の運輸相も乗車していました。技術的な不具合で30分近く遅れて出発しましたが、今度は空調が停止。座席の上部から水が漏れ出し、乗客は立ったままの状態で、約40分遅れでロンドンに到着したそうです。

 深刻なトラブルではないとのことですが、この日は営業運転の初日だっただけに、印象が悪くなってしまったのは間違いないでしょう。

 日本政府は、鉄道インフラの輸出を国策に掲げており、日立はこの分野の優等生と言われています。今回のトラブルが日立の経営に大きな影響を与える可能性は低いですが、この話とは別に、欧州の鉄道ビジネスは大きく動いており、日本企業にとっては厳しい状況となりつつあります。

 今年9月、独シーメンスと仏アルストムは、両社の鉄道部門を統合すると発表しました。世界の鉄道車両の市場は、シーメンスがトップでアルストムがそれに続くという状況でしたが、中国の国有企業2社が統合されたことで状況が一変。新しく発足した中国中車は、低コストを武器に新興国で受注攻勢を強め、世界トップの座を獲得しています。

 今回の統合はこれに対応するための措置と言われていますが、本当の狙いは別にあるとの見方も有力です。それは製造業のIT化への対応です。

 シーメンスや米GEといったグローバル企業は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)に巨額の投資を行っており、製造業の構造転換を図ろうとしています。納入した機器の運転状況をAIが監視し、メンテナンスなども含めた総合サービスを提供しようという試みですが、こうしたビジネスで重要なのは仕様の統一です。事業のIT化によって、車両製造の付加価値は低下していきますから、この部分は思い切って中国企業に任せてしまうという選択肢も十分にあり得るでしょう。

 製造業のIT化が統合の狙いだとすると、日立など日本企業の立場は苦しくなります。付加価値が高く儲かりそうなITサービスの分野は、シーメンスやアルストムが持っていき、あまり儲からない車両製造の分野で、中国企業と争う結果となるからです。日立は英国を足がかりに欧州大陸に進出する計画を立てていましたが、雲行きが怪しくなってきました。実は水漏れトラブルどころではないのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)

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