写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 前日の試合で、ダルビッシュ有から本塁打を放ったユリエスキ・グリエルがダグアウトで目尻をつり上げ、アジア人を蔑視するようなジェスチャーをした問題で、大リーグ機構は28日午後3時(現地時間)から、ロブ・マンフレッドコミッショナーの会見を行った。

 時間通りに会見場に姿を見せたマンフレッドコミッショナーは、硬い表情。質問を受ける前に、「まず、大切なことなので私から始めさせてくれ」と切り出し、強い口調で続けた。
「我々のリーグにおいて、昨晩、我々が目にしたような行為は、絶対に許されない。そして、どんな言い訳、説明も受け入れられるものではない」

 その上で発表された処分は、以下の通り。

・ 来季開幕から5試合の出場停止

・ その間は無給。その分のお金をチャリティに寄付する(約3,661万円)

・ オフに感受性訓練を義務付ける

5試合というのは、これまで差別を助長するような発言の場合、2〜3試合の出場停止処分が多かったことから、前例と比較すると重いものの、グリエルはワールドシリーズでの出場停止を逃れた。この点について、「様々な捉え方があると思う」とした上で、コミッショナーはその理由をいくつか挙げている。

「(彼を欠くことは)アストロズの他の24人にとってフェアではない」

 また、「ダルビッシュと話をしたところ、(起きたことよりも)この先のことを考えたいという意向が示された」という。それによって「来季の開幕からのほうがいいのではないか」と考える一因となったそうだ。

 当初、「出場停止を遅らせることは、選手にアピールする権利を行使する時間を与えてしまう」とも考えたという。しかし、「彼(グリエル)が、それを行使することはない」という見通しが立ったことから、来季という選択肢が現実的となった。ワールドシリーズには出す、という条件を与えたことで、グリエル側も納得したと見られる。実際、その後になってグリエルがアピールしないことが明らかになっている。

 ところで前日、グリエルは自らの行為について、その意味を知っていたのか、また、その意図を説明することなく会見を打ち切ったが、コミッショナーは、「彼は行為についても、言葉についても理解していたと信じている」と話し、続けた。
「誰かを傷つける意図はなかったと主張していた。もちろん、それが侮辱的なことだと理解をしているが、意図的ではなかったというのは、大事なことだ」

 グリエルが反省していること、また、誰かを侮辱するような意図がなかったこと。それらが決断の大きな判断材料になったようだが、もう一つ、そこに要因が加わったか。

 ダルビッシュは前日、「ああいうことをパブリックのところでしてしまっている以上は、ちゃんとMLB(大リーグ機構)も、それなりの処置をしないといけないとは思います」と日米のメディアに話したが、そのことがどんな影響を与えたかと聞かれたコミッショナーは、「ダルビッシュは、このネガティブな問題を選手として、可能な限り適切に対応しており、決定的なものではなかった、一因ではあった」と明かしている。

 分かりにくい説明だが、一部米メディアの中には、ダルビッシュが「ワールドシリーズ期間の出場停止処分は望まない」と伝え、それが決断を左右したのでは、と見る向きもあった。

 結局、マンフレッドコミッショナーとしては、ワールドシリーズ期間中の出場停止を考えたが、それに対してグリエル側がアピールをして、正式決定の引き伸ばしを匂わせたのではないか。

 それではしかし、決着が長引き、ワールドシリーズに影を落としかねない。大リーグ機構としてはそれだけは避けたい。よって、ワールドシリーズでの出場停止を見合わせる代わりに、通常よりも長い出場停止処分を受け入れさせた。そういう形で体裁を保った、というのが実際のところではないか。もちろんそこでは、ダルビッシュの意向が働いた可能性もある。

 いずれにしても大リーグ機構は、素早く動き、問題の幕引きを図った。

(文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)

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