ダルビッシュへのグリエルの人種差別行為に下された処分を巡って米では賛否が(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ワールドシリーズ第3戦で横浜DeNAでのプレー経験もあるアストロズのグリエル内野手が、ドジャースのダルビッシュ有を人種差別するかのような目を横に引っ張る行為をベンチ内で行った問題に関して、メジャーリーグは、来季の開幕から5試合の出場停止処分をグリエルに科すことを発表した。

メジャーリーグのマンフレッドコミッショナーは、ワールドシリーズ中の出場停止処分ではなく、来季開幕からの出場停止処分とした。米メディアは、コミッショナーの決断をおおむね「妥当だ」と評価しているが、一部メディアや、ファンの間では批判の声もあり、賛否が巻き起きている。

米スポーツ専門局ESPN電子版は「マンフレッドはグリエルの行為により、リーダーシップを試されたが、そのテストにパスした」という見出しで報じた。

ESPNの記事は、「リーダーシップを発する時には、針に糸を通すかのような状況で、ベストの判断をしなければいけない。マンフレッドコミッショナーは、悪い状況についてベストを尽くしたと言える。2018年の開幕から5試合出場停止処分を科したが、マンフレッドは、この問題の核心にレーザーのように焦点を当てていた」と表現した。

メジャーリーグが決して人種差別を許さないという姿勢と、グリエルと、ダルビッシュのリアクションから、グリエルへの処分は決められた。
 同記事は、「両サイドのリアクションが、この問題の温度を下げることに貢献した。グリエルは後悔をしており、ダルビッシュはすぐさまこれを学びの機会にするべきだとした」と書き、グリエルの反省とダルビッシュの対応も、判断材料になったことをほのめかしている。

そして、「野球界は、どのような適切なメッセージを発信すればよいのか。。もし、マンフレッドがすぐさまハンマーを叩いていたら、選手会が異議申し立てをし、ワールドシリーズ中のありがたくないサイドショーになっていただろう」と、最悪のケースが何だったかを伝えた。

 仮にグリエルにワールドシリーズでの出場停止処分を科した場合には、選手会が異議申し立てをし、メジャーリーグの一年を締めくくる大事なシリーズが混乱していたことを指摘。コミッッショナーが、その最悪事態を避けて同時に理に適った処分を下したことを評価した。

 同記事は「グリエルの処分は筋の通ったものだろう。2012年にはトロントの遊撃手だったエスコバルが同性愛者への差別発言で3試合出場停止になり、今年はトロントのピラーとオークランドのジョイスが同性愛者への差別発言で2試合の出場停止処分となっっている」とも続けた。

 ワールドシリーズ中の出場停止処分は避けたが、他の差別発言への罰よりも、数試合重い出場停止処分にしたことも「筋が通った処分」と評価した理由のひとつだろう。

また、ニューヨーク・タイムズ紙は、「レギュラーシーズンで、同様の処分があった場合は、選手は異議申し立ての全てのプロセスが終了するまで出場が認められる。ポストシーズンは、異なるタイムテーブルで行われている。選手会が異議申し立てをした場合には、ワールドシリーズは混乱にも対応しなければいけない。マンフレッドは、記者会見ではこれについてははっきりと話していないが、この種の混乱を避けたかったのかもしれない」と、コミッショナーがワールドシリーズ中の処分を避けた背景を分析している。

ただ、米メディアのなかにはコミッショナーのこの裁定を批判するものもあった。

 米スポーツウェブサイトのザ・リンガーは「これは野球だけの問題ではない。世界中の注目が注がれているなかで、あなた(コミッショナー)が、どのような行為を容認するかを示すものだ。人種差別は許さないとしながらも、それはワールドシリーズほどには重要でないということか」と、ワールドシリーズ中の出場停止処分をグリエルに科さなかったコミッショナーの判断を批判した。

今回の処分について、メジャーリーグファンのSNSでの声を拾ってみると、ツイッターでは「コミッショナーの判断に100%同意する」という投稿もあったが、「例えワールドシリーズ中であっても、すぐに出場停止処分にするべきだ」という投稿も多く見られた。「出場停止が5試合では少なすぎる」という声もあった。グリエルも正式に謝罪を表明。今回の人種差別問題には決着がついた格好だが、その処分への賛否も含めて全米への余波は、まだおさまりそうにない。