撮影:高橋邦典

 ネパールの首都カトマンズにあるダルバール広場。古いチベット仏教建造物の並ぶこの一角は、人気の観光名所でもある。2009年、僕が初めてストリート・チルドレンと遭遇したのがこの広場だった。

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 10代後半に成長したビッピンドラは、背は随分伸びたものの、相変わらずグルー(接着ボンド)にまみれた生活だった。それでも、大人になりつつある彼は、心の奥底では将来に不安を感じ始めているようだった。路上生活から抜け出したい、という気持ちはあるのだろう。仲間たちと何度か施設にも入ったが、ひと月もしないうちに路上に戻ってきてしまう。

 「施設は合わないんだ。自由がない。俺は食べたい時に食べたいし、遊びたい時に遊ぶ。学校にも行かせてもらったけど、読み書きもできないし、何も分からない。つまらないからすぐに出てきた」

 不安はあっても、何をしていいかわからないし、考えたくもないから、グルーを吸って現実から逃避する。毎日がそんな繰り返しなのかもしれない。

フォトジャーナル<ネパールのストリートチルドレン>- 高橋邦典 第50回

撮影:高橋邦典

 朝早く、寝床から出たばかりのビッピンドラをつかまえて、ベンチに腰を下ろした。グルーを吸う前の、頭のクリアなうちに話をしたかったのだ。

 「家を出た時は、悲しかった。何度も家に戻りたいとは思ったけど、居場所もない。今は家出をしたことを後悔してる。でももう戻る場所なんてない」

 彼の身の上は、酒癖の悪い父親と継母に殴られるという、他の子供たちと似たり寄ったりのものだった。生みの母親はビッピンドラの弟と妹と共に住んでいるようだが、もう何年も会っていない。

 「将来、もし教育を受けて、仕事につけたら、母さんと一緒に暮らしたい。だけど、タバコとグルーはやめなくちゃな。でないと一緒に住んでくれないだろうし」

(2016年3月撮影)

※この記事はフォトジャーナル<ネパールのストリートチルドレン>- 高橋邦典 第50回」の一部を抜粋したものです。

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