映画「ザ・サークル」、ジェームズ・ポンソルト監督(左)と古市憲寿氏(右)<撮影:志和浩司>

 インターネットは情報の流通をはじめ、私たちに大きな恩恵をもたらしたが、近年ではSNSでの炎上騒動やプライバシー問題など負の面もクローズアップされている。エマ・ワトソン主演の映画「ザ・サークル」(11月10日公開)は、トム・ハンクスやジョン・ボイエガ、カレン・ギランら豪華な共演陣で話題だが、まさにその負の側面を扱っている問題作だ。ジェームズ・ポンソルト監督、そして自身もたびたびツイッターなどでの発言が炎上するという社会学者でコメンテーターの古市憲寿氏に映画について、ネット社会について、話を聞いた。

『ザ・サークル』(C)2017 IN Splitter, L.P. All Rights Reserved.

 エマは、世界トップの巨大SNS 企業「サークル」の新入社員であるメイを演じる。彼女はカリスマ経営者ベイリー(ハンクス)の目に留まり、新サービスのモデルに抜擢、超小型カメラで自身の生活を24時間すべてネット上に公開。フォロワーは1000万人を超え、世界中の人々が注目する中でほぼプライバシーのない生活を強いられていくサスペンス。

ジェームズ・ポンソルト監督<撮影:志和浩司>

 「監視社会やプライバシーがこの映画の一番のテーマです。テクノロジーの進歩のスピードは、想像よりはるかに早い。いま未来を描いた映画を作ろうと思っても、すぐそれらが現実のものになってしまうんです」と話すポンソルト監督。こういう時代であればこそ、意志をもって情報を自由に使わないといけないという。

 「ビッグデータをうまく使った企業が強大な権力を得ている。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグも大統領選挙出馬説が出るぐらいですし、ほかのIT企業もそうですが、会社がこれだけの力を持てるなんて以前は想像できなかった。そこで起きることは、私たちにとっていいことなのか。もしかしたら恐ろしいことなんじゃないか」

インターネットは”村社会”に近い(古市氏)

古市憲寿氏<撮影:志和浩司>

 ポンソルト監督の見解を受けて古市氏は、インターネットは”村社会”に近いと持論を述べる。

 「たとえば僕らぐらいの世代だと、中学高校時代から携帯を持っています。そのころの連絡先が、いまでもずっとつながっている。さらにもっと下の世代になると初めからミクシィ、フェイスブック、さまざまなソーシャルメディアに囲まれてきました。昔なら、会社を変えたり大学に進学したり、引っ越したり、どこかで人間関係を切ることができたわけですが、いまは切りにくくなっています」

 確かに、フェイスブックのようなSNSで一度つながったら、その関係を切ることは非常に難しい。下手に切れば、相手の感情を害してしまう。そのために悩む人々も続出している。

 「その中である種の村社会、コミュニティみたいなものが復活してしまっていると思うんですね。だからインターネット上で起こっていることは新しい現象というよりも、近代以前の村社会に近いのかもしれません。村社会は究極の監視社会です。誰がきのう死んだとか、誰と誰が仲がいいとか細かいことが噂によって流通する。インターネットを通じて、村社会が世界規模で復活しているのかもしれないですね」

 そんな中、古市氏が同作を観て、一番怖さを感じるところはテクノロジーの部分ではないという。

 「変わらない人間自身の虚栄心であるとか嫉妬であるとか、いろんな感情が爆発してしまう、暴発してしまう怖さをものすごく感じました。『サークル』という会社にいる人たちはほとんどが善良で仕事のできる人たちであると思うけれど、そういう人たちの善意の連鎖によって不幸が起こってしまう。実際の人間社会でも起きることだし、その点はすごくリアルだなと思いました」

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