旋律の88秒TKO勝利で東日本新人王の技能賞を獲得した薮崎賢人(左)とセレス小林会長(右)

プロボクシングの東日本新人王の決勝が3日、後楽園ホールで11階級に渡って行われ、劇的な勝利を飾った3人のボクサーに3賞が贈られた。MVPは、1回KO勝利したSバンタム級の飯見嵐(ワタナベ)、敢闘賞には、3回TKO勝利したマジシャンの副業を持つSフェザー級のジロリアン陸(フラッシュ赤羽)、そして技能賞には、わずか88秒でTKO勝利したフライ級の薮崎賢人(セレス)が選ばれた。

ブルファイターの飯見嵐は、まさに嵐のような攻撃力を見せた。マジシャンであり「ラーメン二郎」大好きの個性豊かなジロリアンも左目をカットし、鼻血を噴出しながらも、二松学舎出身の元高校球児、今井健裕(ワールドスポーツ)をTKOで大の字にした。
 カシアス内藤のご子息である内藤未来(E&Jカシアス)と消滅したヨネクラジムの遺伝子を守る有岡康輔(三迫)との魂を剥き出しに激突させたライト級の試合もホールを興奮させた(結果は有岡の5回TKO勝利)。
 だが、筆者が新人王戦で、いつも探し求めているのは、溜息が出るほどのパンチ力を備えたハードパンチャーである。これだけは天賦の才能が備わっていなければ鍛えて伸ばすのにも限界がある世界。この日の11カードの試合に、その原石が一人見つかった。

 フライ級に出場した元WBA世界Sフライ級王者、セレス小林会長の秘蔵っ子、薮崎である。相手の荒川竜平(中野サイトウ)も、サウスポーで悪くないボクサーだったが、薮崎はキレにキレていた。
 強烈なインパクトがあった。
 1ラウンドに薮崎は、サウスポースタイルからスピードにのった左フックから右フックをかぶせて一度目のダウンを奪うと、続けて左のフックをドンピシャのタイミングでヒット。2度目のダウン。もう荒川は完全に足に来ていた。必殺のカウンターである。
 荒川は、それでも立ち上がってきたが、薮崎が襲いかかる。猛ラッシュに荒川の戦意喪失を認めたレフェリーが試合を止めた。1ラウンド1分28秒、わずか88秒で戦慄のTKO勝利である。

 応援にかけつけていた同ジムのIBF世界Sバンタム級王者、岩佐亮佑が、マス・ボクシングで、その威力に驚いたというほどのパンチ力。どこに、これほどの逸材が隠れていたのか、と思うほどである。

 バズーカ砲ではなくカミソリのようなキレ。大袈裟かもしれないが2階級王者、井上尚弥を初めて見たときに近い衝撃を受けた。

「まさか、僕なんかが技能賞をもらえるなんて。気持ちを落ち着けて試合に臨めたのが良かったと思うんです。試合はよく覚えていないんですが(笑)、練習でやったことが少し試合に出せました。嬉しいです」

 リングを降りメガネをかけた薮崎は、とてもボクサーに見えない草食タイプの20歳の好青年。

 試合前には、セレス小林会長から、「一発を狙うな」「足の動きを柔らかく」「ボディから」と、練習で徹底してきたことをもう一度、確認された。

「判定でいい。倒そうと一発を狙うと力むので倒すことを考えずにいこう」。会長の教えを忠実に肝に命じてリングに上がったが、備わったハードパンチャーの本能が黙っていなかった。

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