ソフトバンクが2年ぶり8度目の日本一。勝敗を分けたのは野球の成熟度

 タイミングはアウトだった。
 3-3で迎えた延長11回二死一、二塁。極端な前進守備を敷いていた梶谷は、川島の打球を処理するとクイックスロー。だが、バックホームしたボールはホーム周辺のアンツーカでポーンと弾み、嶺井が伸ばすミットの上を遥かに越えていってしまった。日本シリーズで史上3度目となるサヨナラでの2年ぶり8度目の日本一。サヨナラのヒーローは、この打席まで3三振とサッパリの川島だった。

 「本当に打てて良かった。取り組んできたことが報われた」

 楽天とのCSファイナルステージの第2戦では、慣れぬライトのポジションで、初回にミスを犯してチームの足を引っ張った。このときも不用意にはねたボールを後ろにそらすことになり、それが楽天の先取点になった。翌日、ソフトバンクに詳しい評論家の池田親興氏が、川島に取材で声をかけると、「野球の神様っているんですかね?」と嘆いたという。

「そりゃいるだろう。どっかで昨日のお返しをしてくれるさ」と池田氏は、川島を励ましたそうだが、その川島が日本シリーズで日本一を決めるサヨナラ打を放ち、しかも、バックホームされたボールが、まったく予想だにしない方向へ跳ねたのである。

「偶然にしても出来すぎだよね。どこかで野球の神様は見ていたんだろう」
 記者席に座っていた池田氏は、フィナーレに運命的なものを感じたという。

 1点を追う9回一死から、横浜DeNAの守護神、山崎のツーシームを狙って一発で仕留めた内川の同点本塁打が、なによりの殊勲である。
 工藤監督は、優勝監督インタビューの途中で、その内川を呼び、お立ち台に上げるというむちゃぶり演出をしたが、キャプテンの一打は窮地のチームを救った。

 しかし、前述の池田氏は、8回に2-3と詰め寄った「1点」が大きかったと見る。

 そこには死闘を繰り広げたソフトバンクと横浜DeNAの成熟度の違いが浮き彫りになっていた。

「実は、三塁走者の城所は打球判断を誤って、三本間の途中で止まるという中途半端な走塁をしてしまっていた。走塁ミス。だが、キャッチャーは一塁を指示した。もしホームに投げていたら失点を防げていた。こういう細かなプレーのほころびが短期決戦では響く」
 
 場面はこうだ。
 8回一死三塁で、柳田を迎えたところでラミレス監督は、左腕の砂田をマウンドに。一人一殺の小刻み継投である。砂田は、柳田のタイミングを崩した。ボテボテのゴロが一塁側へ。マウンドを駆け下りた砂田は、それを正面で捕球した。だが、このとき、三塁走者の城所は「ギャンブルスタート」も、「ゴロゴー」もできていなかった。中途半端な場所でストップしていたのである。
 砂田は、「走者は見えていたがファーストに投げようとしていたので、もう止められなかった」と言う。走者は代走でもあり、てっきりスタートを切っているものという先入観でファーストへ投げてしまったのである。冷静に判断していれば、城所を三本間に挟み、1点を封じることができていた。
 ラミレス監督になって横浜DeNAは細かい野球が少し出来始めていたが、「成熟度が足りない」、「勝ち方を知らない」チームの弱点が大事な場面で出たのである。

 ミスがミスで救われるのは野球ではよくある現象だが、1点差になったことは、いらぬプレッシャーをストッパーの山崎に与え、内川の起死回生の一発につながる布石となったのかもしれない。

横浜DeNAには、延長11回にもミスがあった。一死一、二塁から松田のサードゴロをベース近くで処理した宮崎が、そのままベースを踏み、併殺を狙って一塁へ送球したが、ボールで逸れてロペスの足が離れた。タイミングはアウトだった。併殺が成立していれば、川島のサヨナラヒットは生まれていなかった。

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