ハリルが一目惚れした長澤(右)は秘密兵器となるか(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

夢と興奮に満ちた挑戦の旅が幕を開けた。カシマスタジアムで5日に行われた、鹿島アントラーズとのJ1第32節を戦い終えた浦和レッズのチームバスが、先発でフル出場した5人を残したまま帰路についていく。

 5人とはDF槙野智章、MF遠藤航、GK西川周作、FW興梠慎三、そしてMF長澤和輝。
 FIFAランキング2位のブラジル代表(10日・仏リール)、同5位のベルギー代表(14日・ベルギーのブルージュ)と対戦する欧州遠征へ5日夜に出発したハリルジャパンに、茨城県鹿嶋市からそのまま合流するためだ。

 槙野はチームの常連であり、遠藤は球際の強さが再評価され始めた。そこへ西川と興梠が復帰を果たしたなかで、異彩を放つのが長澤だ。

 何しろ0‐1で敗れた、この日の鹿島戦を含めて、J1の舞台でまだ6試合、342分間しかプレーしていない。
 
 国内外を問わず、細かく選手をチェックしているヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、欧州遠征に臨むメンバー25人を発表した先月31日の会見で、長澤に関してこう言及していたほどだ。

「ACLでのプレーがいいと思った。それより前は見ていなかった」

 長澤が存在感を放ったのは9月27日と10月18日に行われた、上海上港(中国)とのACL準決勝。ともにインサイドハーフとして先発フル出場した25歳は、攻守両面でハリルホジッチ監督が好む「デュエル(1対1の攻防)」で随所に強さを発揮した。

 指揮官を魅了した武器は、台風21号の影響による暴風雨の悪条件で行われた、10月22日のガンバ大阪とのJ1第30節でより顕著になる。水たまりが点在し、足をとられ、滑りやすくなってもいたピッチを生き生きとプレーした長澤は、視察に訪れていたハリルホジッチ監督を再び唸らせた。

「ナガサワは守備でも攻撃でもボリュームがあった。私にとってはいい発見だ」

 まさに一目惚れされた長澤は専修大学4年生だった2013年12月に、ブンデスリーガ2部(当時)のケルンとプロ契約を結んだことで注目を集めた。2部で10試合、昇格した1部で11試合に出場した約2年間が、いま現在のプレースタイルの源になっていると明かしたことがある。

「ピッチで言えば、日本とは比べ物にならないくらいドイツのほうが緩い。芝生の質がねとねとしていて、滑ってしまう。そのなかでずっとやっていくと慣れていって、滑らなくなる」

 前出のG大阪戦で心地よさそうにプレーしていた秘密がここにある。練習を含めて、屈強な大男たちと対峙した日々で球際の強さも磨かれる。球際で怯まない勇気と度胸もついた。

 もちろん、守るだけではない。ボールをキープして、さらに長い距離をもち運ぶ。一連のプレーを、インサイドハーフを組む元日本代表の柏木陽介はこう表現する。

「すげえよ、アイツの下半身ドリブルは」

 要は重心が低く、前への推進力も長けているということ。長澤のサイズは172センチ、68キロ。ドイツの地でどのように生き抜いていくのかを考え、悩み抜いた末に手にした武器だという。