DNA研究技術の進化により、永い眠りについていた化石などを用い、太古のDNAにアプローチする論文の発表が相次いでいます。

 先月、マンモスと同じく氷河期に栄えて絶滅した、巨大な犬歯を持つ「サーベルタイガー(剣歯虎)」のmDNA(ミトコンドリアDNA)を初めて見つけ、分析したという論文が学術雑誌に発表されました。DNAの分析から何が明かされたのか。映画のようにクローン技術でサーベルタイガーを現代によみがえらせることは可能なのか?

 古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、論文著者に直接尋ねた話をまじえて報告します。


氷河期大型肉食哺乳類「サーベルタイガー(剣歯虎)」

ドイツ・ポツダム大学のラボで氷河期のサーベルタイガーの化石からDNAを抽出している研究者。こうした新しいタイプの化石研究が今後も広く見られるかもしれない。(Photo by Karla Fritze at University of Potsdam)

 以前、「イエネコの起源」と近縁の「ネコ科の仲間の進化関係」にスポットをあて、紹介してみたことがある(主に現生の種に焦点をあてた)。
 「イエネコ起源の謎(上中下)」参照 https://thepage.jp/detail/20170706-00000007-wordleaf

 しかし今回取り上げるネコは、そのスケールが桁違いだ。

 その名も「サーベルタイガー(剣歯虎)」。すでに絶滅しているため、現在その姿を直接見かけることはできない。(しかし、ペットには、まるでむいていなかったはずだ。サーカスなどで芸を教えることもかなわなかったはずだ。)

サーベルタイガーHomotheriumの復元図。氷河期に栄えた大型哺乳類の中でもアイコン的存在だ。剣歯と呼ばれる鋭い牙で、どのような獲物をしとめたのだろうか?(Drawing by Binia de Cahsan(C) Binia de Cahsan)

 このサーベルタイガーの横顔のイメージに「ピン」と来る方がいるかもしれない。

 上アゴから突き出した、独特の長く鋭い犬歯(=「剣歯」!)。この哺乳類の進化史上でも斬新な武器を使って、まず間違いなく多くの獲物を仕留めてきたはずだ。その犠牲者(=生物)の中には、我々人類の直接の祖先も(数々の証拠により)含まれていたと考えられている。(大きく開いた二つの穴を持つ頭蓋骨を前にされると、私の開いた口はしばしふさがらない。)

 サーベルタイガーの巨大な体躯とするどい牙の迫力は、現在生息するライオンやトラなど、文字通り「子猫あつかい」してしまうだろう。太古の生物には我々の創造力を大きく超え、不思議な魅力を持つものがいくつかいる。その中でもサーベルタイガーは代表的な、古生物のアイコン的な存在の一つといえる。(「Ice Age(2002年)」というアニメ映画で大活躍していた姿を覚えている方も多いはずだ。)

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