羊群れの写真をスマートフォンで撮り、中国版のSNSであるWechatにアップするのも一般的になった。家畜の売買や値段の確認などもネットが普及したことで、遊牧民に有利になってきている=シリンゴル盟・ジューグンウジュムチン・ホショー(2016年9月撮影)

 日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚しい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第5回

羊を売っている。昔ははかりもよく確かめることがなくて騙されていたが、今は必ず自分で一頭ずつ計って、記録し、お金をもらうようになってきた。白いシャツの若者が遊牧民である=シリンゴル盟・シリンホト市(2014年9月撮影)

 遊牧民は長い歴史において、商売をした経験がない。もっと正確にいうと、最近までは商売することを嫌い、それはすごく恥ずかしいことと考えた。遊牧民にとっては商売する人は他人を騙し、金を儲ける悪人だった。

 彼らは家畜を育て、その家畜の乳を飲み、乳製品を作り、家畜のお肉を食べ、その毛皮で衣装を作った。また、家畜の毛でフェルトや糸を作った。すべての生活必要品は家畜によって持たされていた。米や布や絹あるいは鉄製品などは漢族商人と物々交換していた。

 しかし、中国の改革開放政策以降はその生活様式が崩れ、彼らにも現金収入が何よりも重要になってきた。今は家畜を少しでも高く売るために、インターネットを利用し、内モンゴル自治区以外の各省にいる客に直売したり、あるいは、自分たちで新しい共同体を作り、牧草地の管理から、家畜に売買まで、一貫して、管理する試みも始まっている。

 特に、最近は上海や北京などの大都市に行われる農産物のイベントに参加する個人や団体がますます増え、少しでも自分たちのブランドイメージをアップするとともに、利益も確保しようという動きが目立つようになってきた。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第5回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。

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