日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚しい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第5回

伝統的な衣装を身にまとう女性、長い帯に代わり、簡易な帯を使うようになっている=シリンゴル盟・アバガ・ホショー(2012年7月撮影)

 モンゴルの衣装について簡単に紹介しておく。

 モンゴルの伝統衣装は「デール」といい、左おくみ前開きの長い服である。えり、左肩、脇と腰部分に銀製あるいは布製のボタンがある。これは「トップチ」といい、地域によってこのトップチの位置や数が異なる。

 男女ともに長い帯でぐるぐると巻き、これを「ブス」という。男性の場合、毎日ブスを欠かせないので、男性を「ブステー・フン」という。フンは人間で、名詞にテーが付くと“何々がある”という意味だ。つまり、「ブスを巻いている人」となる。

 女性の場合は、乗馬や野外の労働以外はブスを巻かないことが多く、「ブスグェ・フン」という。名詞にウグェが付くと今度は“何々がない”となる。ブスにウグェをつけるときは発音上「ウ」がなくなるため、 「ブスグェ」と言い、意味は「帯なし人」になる。私は子供のころ、その意味をよく理解できなくて、なぜ女性のことはブスグェ・フンと呼ぶんだろう、と戸惑っていたことを今もよく覚えている。

 そして冬には、裏地に「ホラガン・アラソン・デール」と呼ばれる仔羊の毛皮を使用する。直訳すると「仔羊皮のデール」だ。「ジョッボチョー」ともいう。冬の寒い風を通さず、体がポカポカととても暖かいものだが、ただ、少し重たい。

 靴は乗馬に適した長靴が一般的だ。主に羊皮や牛革で作っていた。冬はその長靴の中にフェルトの厚い靴下のようなものを一枚入れて履く。いまは、乗馬以外は長靴を履く人がほとんどいない。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第5回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。