1984年のマイルス・デイビス(写真:Shutterstock/アフロ)

 クラシック・ジャズからモダン・ジャズへ変わっていく中で、音楽そのものや演奏スタイルのほか、ファッションにも変遷が見られます。マイルス・デイビスなど、今までにはなかった個性的なファッションを好むミュージシャンが登場します。ジャズと切り離せないファッションについて、ジャズ評論家の青木和富さんが解説します。

【連載】青木和富の「今夜はJAZZになれ!」

白人に媚びないマイルスのスタイル

1986年のマイルス・デイビス(写真:Shutterstock/アフロ)

 ジャズ・ミュージシャンは、オシャレだと言われる。確かにマイルス・デイビスは、ステージでお気に入りのデザイナーの三宅一生のジャンプ・スーツを着ていたし、晩年はグラミー賞の授賞式の衣装を佐藤孝信に依頼していたといった話がある。しかし、これはジャズのカリスマのマイルスだからで、普通のジャズ・ミュージシャンが皆こうだとは言えない。人気ギターのパット・メセニーは、いつもボーダー・シャツにジーンズというのが定番で、これはむしろ、あんまり考えたくないからそうしているというのが本音だろう。面倒臭いことはどうでもいいというのも、ジャズ・ミュージシャンらしい考えだ。

 とはいえ、人前に出ての商売だから、それなりの気遣いは必要になる。まして皆タキシードでステージに上るお祝いのイベントとなると、さすがそのドレス・コードに合わせなければならない。メセニーも着慣れないタキシード姿でカーネギー・ホールの舞台に上がったことがあった。ま、こういう素直さもメセニーらしい。しかし、マイルスならこんなことは絶対しないだろう。そして、マイルスなら、それが許される。

 マイルスのタキシード姿は、想像するだけで笑ってしまう。似合わないという以上に、どこかマイルスの生き方に反するイメージがあるのだ。タキシードは、スイング時代までのミュージシャンの制服のようなもので、ノーブルな雰囲気の大人の華やかな社交場にぴったりの服だ。逆に言うと、これは白人たちに媚びへつらう黒人エンタテイナーの服とマイルスなら言い放つかもしれない。マイルスは、ルイ・アームストロングやデューク・エリントンといった先輩たちの敬意を払うと同時に、彼らがエンタテイナーとして、白人たちに媚びる姿が、何としても嫌だと何度も言っている。

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