ブラジルのエース、ネイマールに酒井は果敢に削りにいくが実力差は歴然だった(写真:ロイター/アフロ)

表現が悪いかもしれないが、大人と小学生の試合を見せられたようだった。フランスのリールで行われた日本対ブラジルの親善試合は、1-3のスコア以上に歴然とした実力差があった。ロシアワールドカップの戦いを想定すると思わず愕然としてしまった。

 そもそものパスのスピード、質、精度といった個の能力差だけでなく、本来ならば日本が対抗しておかねばならないグループ戦術にまで差があった。
 特にハイプレッシャーをかけられた状況下では、まったく何もできなかった。ボールを回せず、人の連動ができず、ボールをキープできない。ないない尽くしの中でミスが生まれた。

 前半だけで言えば、ブラジルはネイマールやマルセロら主要メンバーを揃えて本気で来ていた。そういうブラジルを相手に8月のオーストラリア戦と同じフォーメーションを採用。守備ラインを下げ、プレスをかけるゾーンもハーフライン付近にまで下げて臨んだ日本の戦術は、決して間違いではなかった。もし無謀にもっと前線から仕掛けていれば、体力を奪われ、さらに中盤をスカスカにされて失点を重ねただろう。だが、ここまで自由にボールを回され、人が動き、ボールをキープされてしまえば、成す術はなかった。

何かが起きるのは、高い質のパス、連動した人の動き、正確なボールの出し入れ、の3つが揃ったとき。それが、ブラジルにワールドクラスのプレッシャーをかけられると何ひとつできなかったのだから、何かが起きなかったのも当然だった。

 光りを放った選手も一人もいなかった。
 おそらく選手たちがブラジルとの差を一番感じたのではないか。

 後半の日本のプレーを評価する向きがあるのかもしれないが、ブラジルはメンバーを落として点差の余裕もあってかけてくるプレッシャーの濃度が前半とはまったく違った。そう考えると、後半の踏ん張りというものは何の参考にもならない。

 ブラジルとのチームとしての完成度の違いも際立った。

 チッチ監督になってブラジルは個の能力に頼るだけでなく組織力が強化された。攻撃では、個々の高いキープ力を生かし、2列目の飛び出し、オーバーラップの連動性が素晴らしかった。いざボールが動くと、ほとんどノッキングなく、質の高いパスからシュートまで組み立ててくる。しかも、全員に前線から守備の意識もあり、攻撃から守備、守備から攻撃への切り替えが非常に早く、決まりごとの中で全員が連携している。

 ボールを奪ってからは、タテへの共通意識がチームに浸透していて、正確にスピーディーにボールを動かしてカウンターが機能した。
 日本がやらねばならない組織的な戦術である。この日、日本がワンタッチでタテへの意識を速いプレーに変えたのは、わずかにワンプレーだけ。前半30分に山口のタテへのスルーパスに久保が抜け出したシーンだ。だが、このときも、久保が右サイドの深い位置からクロスを出したが、それに反応することはできなかった。一発で決めたブラジルの3点目とは対照的だ。

 個の能力差は仕方がないにしろ、組織力の差がなぜここまで開いてしまったのだろうか。

 私はハリルホジッチ監督が2015年3月に就任以来、日本がたどってきた経緯に起因していると感じている。ここまで“選考”と“戦術”という理由からハリルホジッチ監督はメンバーを固定せずに戦ってきた。合宿時間も試合数も限られる代表チームにおいて、毎回のようにメンバーが変わっていては、チーム戦術の完成度が高まるはずがない。対戦相手によって戦術、戦略を変えるのが、ハリル流かもしれないが、それもベースと言えるメンバー、連携の成熟があってこそのプラスアルファなのだ。

 賛否はあったが、ブラジルワールドカップ前の、ザッケローニ監督は、ほぼメンバーを固めて戦ったことでチーム戦術のベースは出来上がっていた。まだ世界を驚かすような組織力があった。

 もう余り時間は残されていないが、15日のベルギー戦から「チームのグループ戦術の完成度を高める」というテーマを持ってメンバーを固定してゲームに臨んでもらいたい。

ただ、今日の試合を見る限り、ロシアワールドカップの予選リーグに必ず同居するいわゆる第1ポッドのFIFAランキング上位チーム(ロシア、ドイツ、ブラジル、アルゼンチン、ポルトガル、ベルギー、ポーランド、フランスの8カ国が予定)との試合に、何かが起こる予感は持てない。いっそのこと、その第1ポッドチームとの1試合は捨てて予選リーグを突破する方法を考える必要もあるのかもしれない。

(文責・城彰二/元日本代表FW)

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