就任以来初のアジア歴訪を行ったアメリカのトランプ大統領。その最初の訪問国となった11月5日からの来日では、首脳会談以外でも、安倍首相とゴルフ会談や頻繁に食事を共にし、親密な日米関係を内外に強く印象付けました。

 建築家で文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんが、政治・経済・軍事も内包した、文化という大きな視点から日米同盟とはどういう意味を持ち、どうあるべきか考えます。


文化論として

初来日後、共同記者会見に臨んだトランプ米大統領と安倍首相。固い握手が印象的だった=2017年11月6日、迎賓館(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ大統領のアジア歴訪に対する、安倍首相の、握手、ゴルフ、食事、会談、そしてコメントは、日米二国間の大いなる「親密」ぶりを世界に向けて発信した。

 そして韓国は「微妙」な対応をとり、中国は「対等」の関係をアピールする。この「親密・微妙・対等」に、それぞれの国のスタンスがよく表れていた。つまり現在の東アジア情勢は、冷戦時代のような単純な対立ではなく、多角的複合の構図といということだ。

 それにしても、日本とアメリカの同盟(軍事的な)がこれほど意識された(国内にも海外にも)時期もないのではないか。それが先の衆院選挙にも大きな影響を与えた。

 筆者は、軍事の専門家でも政治の専門家でもなく、建築からの文化論を書いてきた人間である。日米同盟の北朝鮮や中国をめぐる軍事的な意味合いはマスコミの報道に任せ、ここでは思いっきりスコープを引いて、巨視的な歴史と地理の視点から、この同盟の「文化的な構図」を考えてみたい。

 日米の文化には、対照的なところと、共通するところがあるのだ。

建築様式と文化様式

[イメージ]日本の古民家。畳、障子を特徴とする(写真:ペイレスイメージズ/アフロ)

 筆者の文化論は、建築様式の分布を基本にしているが、現在、地球上の建築の様式は、三つの層に分けて考えることができる。

 第一に、素朴な住居の様式で、自然風土にしたがって分布し、これは文化の基層を示す。第二に、高度に発達した神殿・聖堂・寺院・宮殿などの様式(宗教様式とする)で、宗教・思想・文字などにしたがって分布し、これは文化の深層を示す。第三に、近代的な高層建築などの様式で、経済と技術にしたがって分布し、これは文化の表層を示す。

 日本の風土様式=基層文化は、豊かな樹木による木造の軸組式で、障子や畳を特徴とする、軽快、精巧、微妙な文化である。ちなみに中国の風土様式は、専(せん)と呼ばれる煉瓦造が主である。

 アメリカの風土様式=基層文化は、先住民の、中央部にはウィグアムやティピーと呼ばれる一種のテント(動物の皮を使う)、北部には丸太小屋のような木造、南部には簡易な日干し煉瓦などの建築様式があり、その文化様式も多様であったが、ヨーロッパ人の進出によってほぼ滅んでしまった。その後、イギリスが入った東北部はヨーロッパ北部に近い風土であり、スペインが入った西南部は地中海に近い風土である。それぞれの風土に近いところを領有したイギリス(アングロサクソン)とスペイン(ヒスパニック)の文化が現在のアメリカ文化の基層をなしている。

 日本の宗教様式=深層文化は、中国を元とする、屋根を支える組物=トキョウが特徴的な木造軸組の様式で、そこには仏教、儒教、道教、神道など、哲学と道徳と祈祷が融合する東洋的な神秘思想が育まれてきた。

 アメリカの宗教様式=深層文化は、西欧のローマン・カトリックからプロテスタントへと転換する様式を基本として、マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』あるいは『フランクリン自伝』に見るような、個人、勤勉、忍耐、自立などの精神が育まれたが、国家の成り立ちからも、移民による多様な宗教思想を包含せざるをえず、絶えざる多文化葛藤を生んできた。

 そして現在の表層文化はどちらも、機能主義のモダニズムを基調とする建築様式で、日米ほぼ同じ様相となっている。

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