未曾有(みぞう)の東京電力福島第1原発事故は国内外に多大な悪影響を及ぼした。放射能汚染により、福島県のみならず東北産、日本産の食品は売れない時期が続いた。今も続いている。観光客も急減した。福島県の原発に近い地域では居住が禁止され、慣れ親しんだ故郷を泣く泣く離れる人々が出てきた。住み続けることができる地域でも、見えない放射能の心理的ストレスなどを抱え、県外に自主避難している人が少なくない。

 東電は賠償を進めるが、先の長い取り組みで費用は膨らんでいる。福島の復興、経営再建の道筋は依然不透明だ。

 今回はあらためて、原発事故がもたらした影響と原子力反対の動きを見ていきたい。

エネルギー小国日本の選択(1) ── 「エネルギー基本計画」見直しへ

汚染された国土

東日本大震災から6年、国会前では脱原発デモが行われた(2017年3月11日、Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 汚染水、汚染米、汚染牛、海洋汚染に土壌汚染 ── 。

 震災後の日本には、汚染という言葉が溢れ返っていた。福島第1原発事故で飛散した放射性セシウムが稲わらに付着し、飼料として食べた肉牛が食品としての放射性物質の基準値を超え、出荷できないといった事態が多発した。

 放射性物質が田畑や山林に舞い散り、また海に放出され、農林水産業に多大な影響が出ている。食品に含まれる放射性セシウムなどが基準値を上回っていないかを出荷前に調べる「モニタリング検査」は震災後、150万回を超えた。政府は「基準値を超える割合は減少」と強調するが、裏を返せば、いまだに検出されている。シイタケなどのキノコ類や野生の鳥獣類は検出されやすく、福島県を中心に出荷が制限されている。福島県産の米は全て出荷前に確認する「全量全袋検査」が続いている。

 基準値を下回っているといっても、有害な物質が少しでも含まれているなら、避けようとするのは自然だ。乳児の粉ミルクなどからもセシウムが検出されており、「自分ならまだしも、子どもには極力安全な物を食べさせ食べさせたい」と感じる子育て中の親は多い。西日本の食品を取り寄せて食生活を送る関東在住者もいる。

 「放射能は半減期があるから大丈夫」、「基準値を下回っていれば安心」といくら言われても、少しネットを検索すれば、それとは違う情報が氾濫し、判断を惑わせる。震災直後の4月5日、ジャーナリストの池上彰氏が「放射線が人体にどれだけ危険か、その情報を見て得心すると、テレビで『直ちに健康に影響が出るレベルではない』と伝えられても安心できません。むしろ、『政府やマスコミは危険なデータを隠しているのではないか』と疑心暗鬼に駆られてしまいます。不安の悪循環です」(ニューズウィーク日本版)とコラムに寄せていたように、放射能を「正しく恐れる」ことは難しい。

 また、こうした連載記事を読むことで「被災地の食品を買うのはよそう」と思ってしまう人がいるかもしれない。「『汚染、汚染』とあなたたち(マスコミ)が騒ぎ立てるのが過剰で異常なのよ」。2011年夏、東京都内で取材した食品関連会社の役員という女性は睨むように告げた。日本産の食品の安全性を海外の取引先から疑問視され、ビジネスに悪影響が出ているといった。