暴力事件を起こした日馬富士問題は異様な展開になっている(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 大相撲の横綱日馬富士の暴行問題が混迷を深めている。

10月25日夜に秋巡業先の鳥取市で起きた同じモンゴル出身の平幕貴ノ岩への暴行が明らかになったのは、九州場所2日目の11月13日。翌14日には一部報道で世間も知ることになった。そこからすでに1週間以上が経過したが、事態が収束に向かう気配もない。真相はいまだヤブの中である。

 新証言などは日替わりで出てくるが、九州場所を休場した貴ノ岩の所在が不明で、当事者からのコメントは一切なし。さらに貴ノ岩の師匠で元横綱の貴乃花親方の不可解な言動が混乱に拍車をかけている。

 何が本当で、何がそうでないのか。
ここで一度、問題を整理してみる。
 日馬富士サイド、貴ノ岩サイドの関係者の証言も食い違う。厳然たる事実は酒席で日馬富士が貴ノ岩に暴行を働いたことだが、報道されているビール瓶での殴打や馬乗りになって殴ったことは、同席していたことを認めた横綱白鵬が否定した。
ただ、ビール瓶などの情報の出所は、実は同じく現場にいた力士の証言によるもの。日馬富士は11月17日の鳥取県警による任意の事情聴取に「素手で殴った」と説明し、19日の日本相撲協会の危機管理委員会の聞き取り調査にもビール瓶で殴ったことは否定した。だが、捜査関係者への取材によると、すでに事情聴取を終えている貴ノ岩のけがの状況は固い物で殴られた際にできる傷だったという。
 
素手で殴るのと、凶器となるビール瓶で殴るのとでは 量刑にも差が出るとされる。詳しい捜査が進めばいずれ事実は明らかになるだろう。しかし、今回の暴行問題の焦点は日本相撲協会vs貴乃花親方という図式に移ってきている。
 
日本相撲協会の理事の一人で、地方巡業の最高責任者である巡業部長を務める貴乃花親方は、日馬富士の暴行の事実を把握した時点で真っ先に協会に報告する義務があった。だが、最初に起こしたアクションは10月29日に鳥取県警への被害届の提出だった。協会が暴行問題を知ったのは鳥取県警から連絡が入った11月2日のこと。翌3日には鏡山危機管理部長が電話で貴乃花親方に事情を聞いたが、貴乃花親方は「よく分からない」と返答した。5日には 暴行を受けたあとも巡業や福岡県内でのイベントにも参加していた貴ノ岩が福岡市内の病院に入院した。
 貴ノ岩の九州場所の休場は10日に発表されたが、九州場所2日目に公表された診断書は「脳しんとう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏れの疑いで全治2週間」という衝撃的な内容だった。その後、危機管理委員会は診断書を作成した医師に確認し、「右中頭蓋底骨折、髄液漏れは疑いであり、事実は確認していない」「暴行を受けた日から全治2週間であり、相撲を取ることに支障はないと判断した」「重傷であるかのように報道されて驚いている」との医師のコメントを発表。
このあたりからダンマリを決め込む貴乃花親方の旗色が悪くなり、世間の見方も変わってきた。

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