政府が力を入れる「人づくり革命」。安倍首相はその内容について話し合うため、この秋発足した有識者会議で、「大学教育向けに返済不要の給付型奨学金の拡充」を検討する考えを明らかにしました。日本では国の議論をきっかけに注目されるようになった「給付型奨学金」ですが、大学の授業料が日本より格段に高い米国では、自治体だけではなく大学や企業などさまざまなレベルで存在し、学生生活を支えているといいます。

ニューヨークブルックリン在住のライター金子毎子さんの報告です。


返済義務のない奨学金 ── 「スカラシップ」

[イメージ]試験に備え、図書館で勉強する学生。日本より学費負担が大きい米国では「スカラシップ」と呼ばれる給付型奨学金制度が用意されています(写真:アフロ)

先の国政選挙で自民党が公約に掲げていた「人づくり革命」。11月初めに政府は教育無償化政策として、大学などの高等教育に約8000億円を配分するという方針を明らかにしました。具体的には給付型奨学金の支給額拡充、授業料減免など。今回はこの「給付型奨学金」、つまり返済義務のない奨学金にまつわる米国事情がテーマです。

米国における給付型奨学金は、「スカラシップ」といいます。このほかに、同じく返済義務がないものとして、一時金として支給される「グラント」もあります。日本で「奨学金」といえば、実際は返済義務のあるローンを意味することがほとんど。2016年に文科省が設置した有識者会議でも、国内には一部の私学などを除いて、返済不要の奨学金はほとんど存在しないことが指摘されました。米国でこれに当たるのはファイナンシャル・エイド、要するに学生ローンで、これはまた全く別の“壮大”な米教育関連カテゴリーとして存在するものです。

というわけで今回は、返済義務のある学生ローンの意味合いが強い「奨学金」という言葉を避け、返済不要な奨学金を意味する言葉として「スカラシップ」を用いることにします。

大学の授業料がとにかく高い!

今や日本でもかなり知られていることですが、米国の大学の授業料は公立・私立にかかわらず桁違いに高い!です。たとえばアイビーリーグのハーバード大やここニューヨーク市のコロンビア大は、学費だけで年間700万円ほどかかります。

また、米国にいわゆる「国立大学」はなく、高等教育は州政府の所管なので、各州に必ず州の名前を冠した大学があります。これらは公立ですから授業料も私学に比べれば安いといえますが、たとえばワシントン大学では州民(in-state)で年間約300万円、州外の学生(out-of-state)では約530万円です。

これだけの学費、ひいては日々の生活費まで全額子どものためにまかなえる家庭がそれほど多くないのは、想像にかたくないと思います。米国で給付型、貸与型の奨学金制度がともに充実・発達しているのは、あきらかにそれも理由のひとつ。今回テーマである給付型奨学金、つまりスカラシップも、連邦政府、地方政府、大学などの高等教育機関、あるいは民間団体など実に様々なレベルで多数存在します。

筆者もオレゴン州の州立大学で、大学独自の奨学金制度の恩恵を受けていました。大学院生アシスタントとして日本文化研究センターの事務をすることで授業料全額免除、毎月10万円ほどの「お給料」も頂いていました。正直これがなかったら、資金が尽きて卒業までこぎつけられなかったかもしれず、今でも本当に感謝しています。

特に大学院では、こうした経済的援助ありき(なければそこには行かない)がめずらしいことではないので、たとえば大学のクラスを教えることで授業料免除や「給付金(stipend)」を受けている学生が実にたくさんいました。

この記事が気に入ったら「いいね!」をお願いします