世界初の超電導リニア高速鉄道となるリニア中央新幹線。南アルプス山岳地帯をトンネルで貫通し、東京―名古屋間を約40分、東京―大阪間を約70分で結ぶ壮大な「国家プロジェクト」だ。事業主体のJR東海は、2027年に品川―名古屋間の開業を目指し工事を進めている。しかし、今、その工事をめぐり沿線住民や自治体などから不安や不信の声が上がっている。

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東京地裁で建設差し止めを求める訴訟

時速500キロで走行する超電導リニア。南アルプスの山岳地帯のトンネルを走行し品川―名古屋間を40分で結ぶ=写真は山梨県都留市のリニア実験線(2010年5月撮影、Natsuki Sakai/アフロ)

 東京地裁でリニア中央新幹線の建設差し止めを求める訴訟が行われている。沿線住民ら約730人がJR東海のリニア建設を認可した国を相手取り2016年5月に提訴したのだ。これまでに7回の公判が開かれ神奈川、山梨、岐阜、長野、静岡、愛知の各県代表者らが意見陳述を行い、それぞれの地域が抱えるリニア建設にかかる問題を訴えた。原告の1人は「意見陳述後は専門家を証人申請し、科学的な見地からリニアの問題を法廷で明らかにしていきたい」と話した。

 訴訟の主要な論点は、全国新幹線鉄道整備法にもとづき認可されたリニア中央新幹線が同法の趣旨に沿う鉄道であるのか、そしてリニア建設が環境影響評価法33条に違反しているのではないか、という点だ。

 訴状は請求の原因について、「日本の自然の宝庫である南アルプスに長大なトンネルを掘るため、トンネル建設発生土の処分や運搬車両による騒音排ガス振動等の生活被害、トンネルによる地下水枯渇、河川の枯渇など環境への影響は計り知れない」と自然破壊、生活への悪影響への懸念を訴える。

 さらに「中央新幹線の消費電力は現行の新幹線の3.5倍である。原発事故以降消費電力の省力化が叫ばれている現代に逆行するリニアを採用する必要があるのか。また地下トンネル内での事故が起きた場合の乗客の安全が確立していない。特に南アルプスの長大トンネル内で事故が起きたら安全に脱出できるのか疑問である」と述べている。

 時速500キロで疾駆するリニアは、既存の鉄道のようにカーブを曲がることはできないという。そのため品川と名古屋そして大阪を「直線コース」で結び、3000メートル級の山々が連なる南アルプスをトンネルで貫通、トンネルから上の土かぶりは最大で1400メートルにも達する見込みだという。

 JR東海によるとトンネル工事は都市部の一般区間はシールド工法、山岳部はNATM工法を採用し、品川―名古屋間は86%がトンネル区間になるという。そのためトンネルを掘って出た膨大な量の土が発生することになる。

 また、山岳地帯からは大量の湧水がトンネルに流れ込むと想定され、特に岩石が粉々に砕けた破砕帯と呼ばれる断層にトンネルが突き当たった場合、異常出水し、過去に東海道線の丹那トンネル工事や黒部ダムの工事などで死亡事故が発生している。

 日本が誇る先端技術の夢を乗せたリニア中央新幹線だが、その実現には相当の難工事が待ち受けていると考えられるのだ。

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