国連教育科学文化機関(ユネスコ)から2018年末に脱退することを表明したアメリカ。直接の契機は、今年7月にユネスコがヘブロン旧市街をパレスチナの世界遺産として認定したことにあると報道されている。

 ヘブロン旧市街にあるマクペラの洞穴はユダヤ教の聖地でもあることからパレスチナの世界遺産とすることにイスラエルが反発、イスラエルと「同盟関係」にあるアメリカの脱退表明に至ったという。

 ユネスコをめぐるイスラエルとパレスチナの思惑、そしてアメリカの脱退表明の意図についてアメリカとイスラエルの関係に詳しい静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之氏に聞いた。

米脱退はイスラエルの思惑外だった

ヘブロン旧市街(写真:アフロ)

 静岡県立大学グローバル地域センター特任助教の西恭之氏は、「イスラエルに敵対する国・勢力がイスラエルを国連から追放しようとしてきましたが、イスラエルは国連の場で自国への非難を弱めるよう外交努力を続けてきました。アメリカが脱退を通告する前日のユネスコ執行委員会では、イスラエル非難決議案が採決されないという勝利を6年ぶりに手にしました。しかし、アメリカが反イスラエル偏向を理由にユネスコから脱退を通告した以上、イスラエルも脱退を準備していると発表せざるを得なくなりました」と話し、アメリカのユネスコ脱退が必ずしもイスラエルの思惑通りだったとは言えないと指摘する。

 アメリカは1982年にユネスコに対する当時のソ連の影響や反イスラエル偏向を理由に脱退したが、2002年ブッシュ政権時に復帰した。イラク問題に対し国際社会の支持を得る目的もあったとされる。

 2011年にはパレスチナがユネスコに加盟したことを受けて、アメリカが分担金の支払いを停止した。ユネスコ執行委員会は2011年以来、イスラエルに対する非難決議を繰り返しており、昨年10月には、イスラエルがエルサレム旧市街でイスラム教徒の礼拝を制限しているなどと非難する決議を採択した。

 決議文には、エルサレムとユダヤ教の関係を否定する目的で、アラビア語の地名だけを使用した。2017年5月にはユネスコ執行委員会がエルサレム全域についてイスラエルの権利を否定する決議を採択、7月にユネスコ世界遺産委員会がヘブロン旧市街をパレスチナの「危機にさらされている世界遺産」に登録、10月にアメリカが脱退を表明したという流れだ。

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