大相撲のモンゴル出身、平幕貴ノ岩に対する暴行問題から横綱日馬富士が引退しました。事件当日にどのようなことがあったか、情報が少しずつ明らかになってきていますが、なぜこのような事態に発展したのか、背景に何があったのか、相撲界は決着をつけることができるのか 、この騒動に対し、厳しい目が向けられたままです。

 建築家で文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんは、この問題を取り巻く状況が、赤穂浪士の討ち入りで知られる忠臣蔵の推移と共通項があり、日本ならではの「公」のとらえ方と「家」に対する考えが影響していると指摘します。「公」が、相撲界(=「家」)を裁こうとすることへ、日本人はなぜ抵抗感があるのか、若山さんが執筆します。


日馬富士の霹靂

横綱日馬富士引退会見を伝えるテレビ=2017年11月29日(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 人格的にも優れ、大学院を修了し、絵は玄人はだし、モンゴルの病気の子供たちを助けている。誰もが「決してそんなことをする人間ではない」という。

 横綱日馬富士の暴行と引退は、まさに「青天の霹靂」、世論も大いに揺れ動いた。

 最初は、酒のせいで行き過ぎたとされた。やがてビール瓶では殴っていない、怪我の程度も軽いのではとされ、むしろ貴乃花親方の態度が問題視された。しかしカラオケのリモコンを使ったことが明白となり、貴ノ岩の頭を縫ったあとの映像が出て、横綱審議委員会は「きわめて厳しい処分」の方針を示す。引退表明のときは、多くの人が「可愛そう」という反応であったが、方向がはっきりして「仕方ない、当然だ」という空気も広がった。そして今度は、白鵬と貴乃花親方の確執が取り沙汰されている。

 テレビ特にワイドショーは、ほぼ暴力否定の論調であった。貴乃花親方に関しては、相撲界の改革者か単なる偏屈者か評価が分かれ、相撲ファンのあいだでは、横綱引退は避けられないものかという同情が強かった。

 この問題に関しては先にこのサイトで「排除」との関係を論じたが、ここでは少し変わった角度から論じてみたい。

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