[写真]重力波をテーマに講演する米MIT名誉教授のワイス氏(ロイター/アフロ、2016年10月撮影)

 今年のノーベル賞の授賞式が、アルフレッド・ノーベルの命日である12月10日(日本時間11日未明)にスウェーデンのストックホルムで開かれます。

 物理学賞は大方の予想通り、「重力波の観測」が選ばれ、初観測を成し遂げたアメリカの天文台「LIGO」(ライゴ)に関わったプロジェクトの中で、特に貢献したレイナー・ワイス博士、バリー・バリッシュ博士、キップ・ソーン博士が受賞しました。

 「アインシュタインが予言した」などと伝えられ、すごい研究であることは何となく分かった気がしても、どんな内容で今後の私たちの生活にどんな影響を与える可能性があるのか、よく分からないという声もありそうな、重力波の観測。あらためて、研究の意義について見ていきたいと思います。

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波のように伝わる「空間のゆがみ」

 重力波の存在はアインシュタインが100年前に提案した一般相対性理論によって予測されていました。

 重力波とは、空間のゆがみが波のように伝わっていく現象です。これだけだとイメージしにくいかもしれませんが、一般相対性理論によると、質量のある物体は存在するだけで時空にゆがみができるといいます。さらにその物体が動くと、時空のゆがみが光速で伝わっていく、その「波」が重力波です。ブラックホールや中性子星などの非常に重い天体が、お互いの周囲を高速で回ったり合体したりするときなどに発生するとされています。

[画像]重力波を観測したLIGO検出器。2台あるうち、写真はルイジアナ州リビングストン(提供:Credit: Caltech/MIT/LIGO Lab)

 予言されていた重力波は、LIGOチームにより初めてその存在が実証されました。この点が評価されての受賞となりましたが、重力波観測の意義はそれにとどまりません。

 これまでの天文学は主に電波や可視光、X線といった電磁波を用いて行ってきましたが、新たに重力波が観測手法として加わり、可能性を広げたことも大きく評価されています(すでに第一発目の観測で、宇宙には想定以上に重いブラックホールが存在するという知見をもたらしています)。

[写真]一辺4キロのLIGO(ロイター/アフロ、2002年1月撮影)

 しかし、こうした研究は私たちの生活にすぐ直接的に役立つわけではありません。重力波を使った新製品が発売されるのをウキウキして待つという状況ではないのです。

 初観測を成し遂げたのはアメリカのLIGOチームでしたが、日本にも重力波望遠鏡KAGRA(かぐら、岐阜県飛騨市神岡町)があります。どちらもキロメートル単位の巨大な施設(※)で、その建設や稼働には数百億円規模の税金が使われる、いわゆる「ビッグサイエンス」です。研究者の「好奇心」に従って研究を進めていくというのは、研究の非常に重要な動機ですが、国の税金を使っている以上、もう一歩進んだ回答がほしいともいえます。

 では、「重力波の観測は何の役に立つのか」という問いには、どんな答えがあるのでしょうか。それを考えるために、まずは重力波観測の科学的意義を確認しましょう。

(※)…LIGOは一辺4キロ、KAGRAは一辺3キロのL字型施設