2017 EAFF E-1サッカー選手権の中村航輔(写真:アフロスポーツ)

 ボールに触れずして、ゴールを守った。誰もが失点を覚悟した大ピンチ。フリーで抜け出した北朝鮮代表のDFパク・ミョンソンが放ったシュートが、ゴールバーの上を大きく超えるミスを導いたのは、日本代表デビューを果たした22歳の守護神、中村航輔(柏レイソル)の我慢だった。

 9日に味の素スタジアムで開幕したEAFF E-1サッカー選手権2017。両チームともに無得点のまま迎えた後半25分だった。ロングボールをミョンソンと競り合ったDF車屋紳太郎(川崎フロンターレ)が空中戦で負けたうえに、バランスを崩してピッチに崩れ落ちる。

 ボールはスイスのFCルツェルンでプレーするFWチョン・イルグァンを介して、ペナルティーエリア内へ走り込んでいたミョンソンへわたる。イルグァンをケアしていた分だけ、DF昌子源(鹿島アントラーズ)のマークが遅れる。DF谷口彰悟(川崎)のカバーも間に合わない。

 最後の砦となった中村は、しかし、突然訪れた絶体絶命のピンチにも動じなかった。必要以上に飛び込まず、ミョンソンとの距離が2メートルほどになった地点で左足を伸ばしながら右足で踏ん張り、両手を目いっぱい広げ、184センチ、72キロの体を実像以上に大きく見せる。

 ミョンソンにとっては、巨大な壁がいきなり目の前に現れた感覚に襲われたはずだ。焦りも生じたのだろう。左足から放たれたシュートは正確性を欠き、ピッチに突っ伏して悔しさを露にする。対照的に小さなガッツポーズを作った中村は、キャプテンを務めた昌子と控えめにタッチを交わした。

 ビッグセーブも連発した。前半だけで2度。後半に入っても24分にイルグァンのヘディング弾を横っ飛びで弾き返すと、38分には縦パスに走り込んできたイルグァンが、懸命に右足を伸ばしてボールにタッチ。中村の眼前でコースを微妙に変えた。

 この場面ではDF室屋成(FC東京)も必死に食らいついてきた。2人のビハインドになったが、獣を彷彿とさせるしなやかで、なおかつ俊敏な動きでセーブ。ペナルティーエリア外に弾かれたボールを自ら追いかけ、味方に預ける獅子奮迅の活躍を演じ続けた。

 もっとも、ピッチを離れれば寡黙で、自他ともに認めるシャイな22歳に豹変する。日本のゴールマウスを死守し、後半アディショナルタイムに劇的な決勝弾を決めたMF井手口陽介(ガンバ大阪)とともにヒーローになっても、威勢のいい言葉は聞こえてこない。

「いい準備ができて、ボールもしっかり見えていたので、いい対応ができたと思います。前線の選手がパワーを出してくれて、最後の最後、苦しいなかで点を取って、チームとして勝つことができてよかった。全員が手応えを感じているんじゃないでしょうか」