地球上にデボン紀に出現したとみられる最古の樹木。そして、化石記録からは、約3億8500万年前には森林ができ、約3億5900万年前の“あっという間”に、各大陸へ拡散していったとみられるようです。

 どうして一気に地球上に広がることになったのでしょうか。そして、森林に覆われた地球という新しい環境の出現が、当時の生物の生態系にどのような影響を与えたのでしょうか。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)がまとめます。


木を見て森を観る:化石記録にひそむデボン紀の森林の陰

デボン紀後期の木の化石。アメリカ南東部テネシー州において著者が発見した。二本の半石炭化した黒い樹木の化石は、このあたりに森林が当時存在していた可能性を示している。(写真:2017年著者撮影)

 前回(「最古の木の化石探求(中)」)の記事で、「ワッツィエザ(Wattieza)」「アーケオプテリス(Archaeopteris)」など、植物進化史上、最古の樹木とされるデボン紀の植物を紹介した。今回はまず、樹木化石の産出状況について触れることからはじめてみたい。

 ―現生とは大きく違う、最も古い樹木の姿とは?「最古の木」の化石探求(中):https://thepage.jp/detail/20171208-00000003-wordleaf

 化石が見つかる量、種の数の豊富さ(少なさ)、保存度(完全な樹木か一部分の姿だけなのか) ── こうした情報は実際に自分の足で現場に行き、直接自分の目で見、感じることが必要となる。この点において、化石研究におけるフィールド(野外)調査は非常に重要だ。(そして、古生物学に携わる上で魅力や醍醐味になる。)

 例えば、私が現在住んでいるここアメリカ南東部のアラバマ州には、「石炭紀後期」 ── 約3億1100万年前ごろ ── の地層(=ポッツヴィル塁層:Pottsville Formation)がたくさん見られる(こちらのニュース参照)。州の北部からかなり良質の石炭が、19世紀のはじめころからたくさん採掘され続けてきた歴史がある。私はアラバマ大学近くの炭鉱地に時々化石採集に出かける。以前紹介したように陸性脊椎動物の足跡(こちら参照)や海生無脊椎動物の骨格化石など、非常にたくさんの興味深い標本が見つかる。

 ―「Foot Prints in Stone」from Alabama News Center in 2016):http://alabamanewscenter.com/2016/07/22/footprints-in-stone-fossils-of-coal-age-animals-attract-global-visitors/
 ―「足跡だけ見つかる 研究者泣かせアテノサウルスは何者?―足跡化石の謎(中)」:https://thepage.jp/detail/20170920-00000002-wordleaf

 そして、(270m近くに達する場所もある)この分厚い石炭紀の地層から、当然、植物の化石も非常にたくさん見つかる(アラバマの炭鉱地で見つかる植物化石はこちら参照)。主にシダ(さまざまな種とグループだ)やリンボク(鱗木:Lepidedendron)と呼ばれる30m以上にも達した巨木の幹、カラマイテス(Calamites:「ロボク」とも呼ばれる)と呼ばれる初期のトサク類(Equisetopsida)の仲間(Kentucky Geological Surveyによる石炭紀の植物化石ガイド参照:https://www.uky.edu/KGS/fossils/pennsylvanianplants.htm)

 多彩で多種多様にわたる何千何万という植物化石の保存状況は、(当然)その当時、このあたり一帯にたくさんの植物が生息していたことを示す。石炭紀には、世界各地において「湿地帯における熱帯雨林」が大繁栄していたことが知られている。