中国戦の均衡を破ったのは小林悠の代表初ゴール(写真:つのだよしお/アフロ)

 青いユニフォームの選手が交代へ向けてスタンバイする光景が視界に入るたびに、FW小林悠(川崎フロンターレ)はベンチへ下げられるのは自分だと半ば覚悟を決めていた。

 前半に2度、左右のクロスに頭を合わせたがゴールの枠をとらえられなかった。1トップを託されながら、後半になると「今日は僕の日じゃないのかな」という思いが脳裏を駆け巡ってもいた。

 味の素スタジアムで中国代表と対峙した、12日のEAFF E-1サッカー選手権2017決勝大会第2戦。すでに前半の段階で交代枠をひとつ使っていた日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、後半30分にFW川又堅碁(ジュビロ磐田)、同37分にはFW阿部浩之(川崎)を投入する。

 ピッチを後にしたのはFW伊東純也(柏レイソル)と、MF土居聖真(鹿島アントラーズ)。小林は9日の北朝鮮代表との初戦に続くフル出場が確定すると、今度は指揮官への感謝の思いが込みあげてきた。

「(中2日で)体はきつかったけど、最後まで自分を信じて使ってくれた」

 最後の交代カードが切られてからわずか2分後の39分。待望の先制点が日本にもたらされる。ゴールネットを揺らしたのは、ハリルホジッチ監督から寄せられた信頼をパワーに変えた小林だった。

 FW倉田秋(ガンバ大阪)が出した縦パスを、相手を背負った状態で受けようとした刹那だった。小林はボールを右足の内側に当てて、微妙にコースを変えて後方にいた川又へすらす。

 虚を突かれたプレーに、中国守備陣がちょっとした混乱に陥る。すかさずシュート体勢に入った川又の右側に生じたスペースへ向けて、素早く反転した小林がスプリントを開始する。

「最初は(川又)堅碁とワンツーをしようと思ったんですけど」

 利き足の左足を振り抜こうとしている川又の目には、どうやら小林の姿が映っていない。川又の性格までも把握したうえで、機転を利かせた小林はダッシュをほんの一瞬だけ緩めている。