ソフトバンクの熱男・松田が2017年を振り返り東京五輪挑戦を表明した

「重かった、あのファンブルは……」

 ソフトバンクの熱男、松田宣浩(34)は、いつになく深刻な顔になった。
 2017年のシーズンを振り返るとき、ソフトバンクのレギュラーシーズンと日本一奪回の歓喜が、松田の心の中では、時折、陰る瞬間があった。嫌な記憶を蘇らせて申し訳ない……。私は、そう小さな声でエキスキューズしてボイスレコーダーのスイッチをオンにした。

 3月21日、米国ロサンゼルス、ドジャースタジアム。

 あの日、小久保監督に率いられた侍ジャパンは、準決勝でアメリカを追い詰めていた。東京ドームで行われた予選ラウンドを全勝で勝ち抜き、世界一奪回のため、アメリカに乗り込んだ日本は、先発の巨人、菅野智之(28)が力投、広島の名手、菊池涼介(27)が自らのタイムリーエラーを同点アーチで帳消しにして試合は1-1のまま8回に突入していた。
 一死二、三塁。
 マウンドには、松田の同僚、千賀滉大(24)がいた。“お化けフォーク”でメジャースカウトの度肝を抜いた投手である。初球だった。オリオールズの通算1650安打を誇るアダム・ジョーンズの詰まった平凡なサードゴロを、松田はグラブのポケットに収めきることができず、わずかに弾いた。三塁走者はスタートを切っていた。もうホームは間に合わない。松田は、落ちついて一塁へ送球して打者走者はアウトにして記録上エラーは付かなかったが痛恨の勝ち越し点を献上することになった。

「千賀が投げた途端にファンブルしていたんです」

 というと?

「おろそかにしたわけではありません。でも、投げる前から、もっと早く打球が来る準備をしておけば……という後悔があります」

 一瞬、なぜか、集中力が追いつかなかった。だから「投げた」「打った」の時間が飛んだ。
 雨で芝は濡れていて、しかも、慣れないドジャースタジアムの天然芝である。
 気をとられるものが多い。いつもの心の準備ができていなかったという。
 
「ミスしなければホームのタイミングはアウトだったと思う」

 松田の野球人生は栄光ばかりではない。中京商(現在、中京大中京)2年の夏に出場した甲子園では、延長にもつれこんだ対那覇高戦で、自らの送球がそれて、決勝点を与えて敗退している。今なお、重たい教訓として刻まれているが、「それらと比べ物にならないくらいの重さがある」という。
「WBCは国を背負ってやる戦い。敵地で僕のミスが決勝点になった。そういう意味では凄く重い」
 日本を2-1で振り切ったアメリカは決勝でプエルトリコに8-0で圧勝して悲願の初優勝を果たした。終わってみれば日本戦が事実上の決勝戦だった。

 傷心の松田は約1週間後にソフトバンクの開幕を迎える。