働き方改革が原因で、休日に開催される顧客向けセミナーを銀行マンがドタキャンしたというケースが話題になっています。働き方改革の本当の目的は生産性を向上させることですが、物事の本質を考えないと本末転倒な結果にもなりかねません。

「働き方改革」を徹底したら、こうなった

本末転倒な「働き方改革」、生産性を犠牲にしてでも労働時間を減らせ?(写真:アフロ)

 著名不動産コンサルタントの牧野知弘氏が文春オンラインに寄せたコラムによると、休日に開催される不動産セミナーに講師として呼ばれ会場に行ったところ、困惑した表情のセミナー主催者から、同じセミナーに登壇予定だった銀行の融資担当者が講演をドタキャンしてしまったという話を聞かされたそうです。

 不動産を購入する個人顧客は、平日には仕事がありますから、こうしたセミナーは休日に開催されることが多くなっています。しかも不動産の購入と銀行のローンは切っても切れない関係にありますから、多くの顧客が融資担当者からの説明を聞きたかったはずです。

 ところが主催者が言うには、その銀行マンは働き方改革を徹底するよう会社から指示されているらしく、休日には仕事はできないと電話があり、説明は急遽、中止になってしまったとのことでした。幸い、もう1社、外資系銀行の担当者が登壇することになっており、予定通りセミナーは開催されたそうです。

日本の企業文化では十分にあり得るケース

 本当のところ、この担当者がどのような理由でセミナーをドタキャンしたのかは定かではありませんが、日本の企業文化では十分にあり得るケースと考えてよいでしょう。

 日本では目的と手段が取り違えられるケースが多く、時に本末転倒な結果をもたらします。かつてマネーロンダリングが問題視され、金融庁が銀行に対する指導を強化したところ、口座開設のためにお金を持ってきた顧客を追い返してしまうという冗談のような話もありました。

 ここまで極端なケースでなくても、働き方改革を実施する際には、手段と目的についてよく吟味する必要があるでしょう。働き方改革の目的はあくまで生産性を向上させることであって、生産性を犠牲にしても労働時間を減らすことではありません(生産性が上がれば、結果的に労働時間も減らせる)。

 このケースであれば、セミナーで営業すれば多くの顧客を獲得できたはずですから、銀行の収益は増加し、生産性は向上します。休日に出勤した分の労働時間は、別の日にしっかり休むことでバランスを取るのが正解といえるでしょう。こうした柔軟な働き方を実現することこそが働き方改革本来の目的です。

 社員の残業時間を減らすため営業時間を一律に短縮する事業者も増えていますが、個別の状況を考えない措置はかえって逆効果になる可能性もあります。

 最近では、同様の目的で外注先に、より早いスケジュールでの納入を求め、外注先がこれに応じられない場合、取引を断ってしまうケースも出てきているようです。そうなってしまうと、ただ生産を縮小するだけという結果になりかねません。状況に応じて合理的な判断ができなければ、本当の意味で働き方改革を実現することはできないでしょう。

(The Capital Tribune Japan)