実物のつしま。「おじいちゃん」こと飼い主さん(女性)にだっこされて

 累計70万部を突破した『鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!』(鴻池剛、@TsuyoshiWood)、手塚治虫賞短編賞を受賞した『夜廻り猫』(深谷かほる、@fukaya91)など、SNS発の猫マンガのヒット作が続き、あらためて巷の猫人気を裏付けている。二作のほかにも、TwitterやInstagram、note、pixivで投稿され、フォロワー数を伸ばしながらファンを増やしている猫漫画は多い。

 こうした猫マンガの共通点は、作者の日常や猫を取り巻く些細な出来事を描いた「ちょっとしたこと」を切り取っている点にある。身近な生き物で、見た目もかわいらしく、描きやすい猫という素材と、猫との暮らしの中で見つけるちょっとした楽しみや感動、悲しみ、思いがけない出来事などが描かれ共感が得られやすいというのも人気の理由だ。

 そうした中で今、人気を集めているのが『俺、つしま』というTwitter発の猫マンガだ。今年7月23日に1枚の猫のイラストでいきなりツイッターに登場した。どうやらユーザー名がそのままマンガ名らしく(アカウントは@tsushimacat)、そのイラストの猫がマンガの主人公である実在する「つしま」という名のきじとら猫の名でもある。『俺、つしま』は、このちょっとふてぶてしくも見える二頭身の元野良猫、現飼い猫の実話をベースにしたマンガだ。現在、7社から書籍化のオファーが寄せられているという。

とにかく猫の絵がうまい

7月にいきなり登場した『俺、つしま』。リアルな表情の猫が二足歩行で買い物袋を下げて歩いているのが、シュールでなんともかわいらしい

 第一印象は「う、うまい…!」。猫の描写が秀逸なのである。表情や姿形、毛色まで、実によく猫を観察していることがわかる。

 一般的な猫漫画の多くがデフォルメでぬいぐるみのような顔をしていたり、擬人化した感情表現のための表情を描いたりしているのに対し、『俺、つしま』の猫たちは実にリアルだ。一見無表情のようにも見える猫の顔だが、目の瞳孔の開き方や威嚇するときの鼻の上のシワ、気持ちいいときに見せる目を細めたうっとり顔など、猫を知り尽くした人にしか描けないリアリティがある。擬人化しなくても充分かわいいのは、本物の猫がかわいいことを知っている作者の作画力の賜物に他ならない。

 彗星のごとく現れた『俺、つしま』。どういった経緯で始まったのか、作者に話を聞いてみた。

 「これまでにも兄妹で絵日記ブログをしていて、猫との日々を綴ってきたんです。でも、私たちの家に定着していなかった野良出身のつーちゃん(つしま)については、当時はまだ家族認定ではなかったので、ほとんどブログにも登場させていなかったんですね。それが、昨年、我が家の猫になったので、あらためて兄につーちゃんの絵を描いてもらったら、思っていた以上にかわいく描けていたので、本当に気軽な気持ちでツイッターにアップしてみたんです」

 『俺、つしま』の作者のひとりである妹さんによると、作者は作画担当の兄と、ストーリー担当の妹のユニットだという。兄妹が一緒に暮らす猫たちとの日常に、人語を話す猫など、ほんの少しのファンタジーを加えて漫画が構成されている。

 「当初は、何気なくアップしただけで、マンガだとか、続けるだとか深く考えていなかったのですが、思いのほか反響が大きくて。日に日にフォロワーさんが増えていき、びっくりしました」

 実際、1エピソードをアップするごとに数百人ずつ、多いときには1000人単位でフォロワーが増えていった。

 「楽しみにしてくれている人が増えたので、ちゃんと更新していきたいと思って、あらためてつーちゃんと出会ってからの4年間を振り返ってみたら、おもしろいこと、楽しいことばかりだったんです。外猫出身の子ともこんな風に仲良くなれるんだよというのを、もっと知ってもらえたら嬉しいなと思っていたら、思っていた以上に共感して頂けたようです」