日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚ましい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。


【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第6回

露天掘りの石炭鉱である。重機と作業員が小さくて、おもちゃのように見える=シリンゴル盟・スニド・バロン・ホショー(2016年9月撮影)

 1990年代初頭までは、私の地元であるシリンホト市郊外には、小規模な石炭鉱の採掘場が一カ所だけ掘られていて、倒産寸前だった。

 しかし、石炭の需要が増えるようになると、火力発電所の建設など、膨大な資金が投資され、多くの国営大手企業が大規模開発に乗り出した。大がかりな石炭鉱の採掘場が次々手がけられ、シリンホト市を包囲するようになってきた。

 これらは露天掘りで、広範囲の草原が使用された。現在は石炭が、このシリンゴル地方、さらに内モンゴル自治区の経済を支えていると言っても過言ではない。

 シリンホト市の郊外にある石炭鉱。砂塵によって、遠くがよく見えない。いわゆるPM2.5が立ち込めていると思われる=シリンゴル盟・シリンホト市(2014年11月撮影)

 石炭鉱の露天掘りでは、地面を掘ってはがされた土が山積みにされていく。その高さは5階建てのマンションをはるかに超える。数多くのトラックがその土山を登ってから、内側の地下深くまで降りてゆくと、石炭を積んで、また登ってくる。

 この山積みにされた土は春の強風に吹かれ、南に位置するシリンホト市を含む広範囲に砂塵が運ばれるため、市民は大気汚染の被害を受けている。これがいわゆるPM2.5が大量に発生する原因で、その影響はさらに北京におよび、時には日本にも届いている。

 露天掘りであるために、遊牧民とっての恵みの雨は、採掘者たちには“敵”となる。そのため、雨雲にロケットを発射して雲を分散させて、雨を降らせないようにしていると言われている。

 ここ数年は、深刻な干ばつが続き、ひどい時には7月に入るまで、雨が降らない地域もあった。そして、石炭を掘る過程と、その後の加工過程で大量な水を使用するため、地下水は急激に減った。石炭鉱の周辺何十キロも離れた牧草地まで影響を受けている。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第6回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。