日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚ましい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。


【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第6回

シリンホト市内にある暖房用煙突、冬になるとセントラルヒーティングを使用するため、市内にいくつかお湯を供給する施設がある=シリンゴル盟・シリンホト市(2014年12月撮影)

 内モンゴルでは、特に鉄、レアアース、石炭などの埋蔵量が豊富で、現在は国家の重要な資源エネルギー基地と位置づけられた。

 このような資源開発では、遊牧民の牧草地が安い値段で買収されている。学歴や商売の力がない彼らは牧草地を手放し、遊牧生活ができなくなり、生きる道を失っている。多くの人は町に流れているが、安定した職業に就くことができない。

 お酒に溺れる者、賭博に依存し、全てを失う者、安い賃金で働く者が増え続けている一方だ。伝統的な遊牧社会では、貧乏な人はいても、餓死したり物乞いする人はいなかった。家畜さえあれば、生きていけたからである。

 2年前、私はシリンホト市内で30代後半くらいの男性が物乞いしているのを見た。なんとも言えない複雑な気持ちだった。誇り高く生きてきた遊牧民も、市場経済において、もっと現実を直視し、新しい生き方を考える時代になっているというべきなのか……。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第6回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。

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