AIの普及によって多くの仕事が機械に取って代わられることは半ば常識となっていますが、そのような時代は想像以上に早く到来するかもしれません。医療の分野では、AIが医師に圧勝するケースが続出しており、診断の自動化が一気に進みそうな状況となっています。

AIが医師に圧勝

イメージ写真(アフロ)

 2016年にオランダの大学が実施した乳がんの画像診断コンテストでは、優秀な病理医に加え、AIを使った画像診断アルゴリズムも競技に参加しました。

 結果は、時間制限なしの場合には人間の判定と同程度、時間制限ありの場合には人間の判定を大きく上回りました。実際の医療現場では、限られた時間の中で結果を出す必要があります。あくまでひとつの事例にすぎませんが、AIを導入した方が明らかに効果的であることが証明されました。

 また2017年1月には、米国のFDA(米国食品医薬品局)が、ベンチャー企業が開発した心臓のMRI(磁気共鳴画像装置)データの解析システムを医療用機器として正式に認可しました。この解析システムはAIの中核技術のひとつである深層学習(ディープラーニング)技術を用いています。

 ディープラーニングは、AI自身に学習させる方法ですが、AIがどのような理由で診断を下したのかは、すぐには分かりません。従来の概念であれば、診断した理由を説明できないシステムは認可の対象にはならないところですが、AIによる精度の高さが優先された形です。

AI時代に重要なのは人間の価値観

 これは医療分野の話ですが、今後は同じようなケースがあらゆる業界で見られることになるでしょう。ただ、AI時代においてもっとも重要なのはAIの技術よりもむしろ人間の価値観です。

 画像診断がAIを上回ったからといって医師の仕事がなくなるわけではありません。とはいえ、医師の仕事内容や必要な医師数など、医療業務をめぐる環境は大きく変わります。

 つまり、AIの普及に合わせて柔軟に組織を変えていく必要があるわけですが、一部の人は利権を失いますから、AIの活用を拒否するかもしれません。医師以外にも、給与が高く社会的地位のある職種の場合、政治力を駆使してAI化を阻む動きも出てくるでしょう。

 新しい技術は、どのような応用ができるのか事前に予想することができません。したがって新しい応用例が出てくるたびに、その是非について判断していく必要があります。

 これはAIに限った話ではありませんが、イノベーションをうまく活用するには、まずやってみて、効果があった場合にはこれを受け入れ、逆に弊害があった場合には対応策を考えるという柔軟な姿勢が大事です。AI普及のペースは速そうですから、社会としてどう対応していくのか、今のうちから議論を重ねておく必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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