日の丸ジェットとして開発が進んでいる三菱重工のMRJに極めて大きな逆風が吹いています。最大のライバルであるブラジルのエンブラエルが米ボーイングとの経営統合に向けて検討を開始したからです。

写真:中尾由里子/アフロ

 米ボーイングは12月21日、ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエルと提携交渉を進めていることを明らかにしました。ブラジル政府が難色を示しているとも言われており、最終的に経営統合が実現するのかは分かりませんが、世界の航空機市場は航空機の種類(機体のサイズ)を超えた寡占に向けて大きく動き出したことは間違いありません。

 現在、大型旅客機の市場は、ボーイングと欧州エアバスの2社が圧倒的な地位を占めています。中国だけは独自の型式証明の制度があるため、中国製の航空機が空を飛んでいますが、それ以外の地域では、ボーイング製かエアバス製ということがほとんどです。

 一方、小型機(リージョナルジェット)の分野はブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアというメーカーがシェアを争っています。

 航空機は、かつては付加価値の高い産業でしたが、この分野もコモディティ化が急速に進んでおり、完成機メーカーがゼロから航空機を作るというケースはほとんどなくなっています。大手の部品メーカー各社が半完成品の状態で主要部品を納入し、完成機メーカーはこれを組み立てるだけというのが主流です。

 つまりどのメーカーが作っても航空機はほぼ同じような中身となってしまうため、他社との差別化が難しくなっているのです。利益率も低くなり、航空機はあまり儲からないビジネスとなってしまいました。

 このような市場においては、高いシェアを持ち、分厚い顧客基盤を持つ既存のメーカーが圧倒的に有利になります。特に大型機については、今から新規参入してボーイングとエアバスの2社に勝てる可能性はほとんどありません。

 一方、リージョナルジェットは、大型機より利益が少ない製品ですが、新興国を中心に今後の伸びが期待できます。三菱はこの市場の伸びしろに賭け、何とかエンブラエルとボンバルディアによる2社寡占市場に割り込もうとしたわけです。

 ところが、ボンバルディアは2017年10月、一部機種の事業をエアバス傘下に移すことを決定。エンブラエルもボーイングとの統合に向けて舵を切り始めました。エアバスの傘下に入る事業はMRJとは直接競合しない機種ではありますが、ボーイングとエンブラエルの統合が実現した場合、三菱は事実上、巨大メーカー2社に単独で勝負を挑む形になります。

 MRJは開発が大幅に遅延しており、すでに5回、納入を延期しています。12月にはMRJの製造を担当する三菱航空機が、初の受注キャンセルが出る可能性について明らかにしました。ボーイングとエンブラエルの交渉次第では、MRJの計画にも何らかの見直しが必要となるかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)