井上尚弥は実力さを見せ付けV7達成(写真・山口裕朗)

プロボクシングのダブル世界戦が30日、横浜文化体育館で行われWBO世界スーパーフライ級王者の井上尚弥(24、大橋)は、同級6位のヨアン・ボワイヨ(29、フランス)から計4度のダウンを奪い3回1分40秒にTKO勝ち7度目防衛に成功した。具志堅用高、山中慎介に並ぶ国内歴代2位となる世界戦9度目のKO勝利となった。

井上尚弥は笑わなかった。

「全然、物足りない。こういうことを言うとせっかく試合を受けてくれた相手に失礼になるけれど、もっとヒリヒリするような試合がしたい。ここ(スーパーフライ)では先が見えないからね」

 あまりに違う実力差。当然と言えば当然の3ラウンドTKO決着に(どんな相手でもKOは簡単ではないが)井上が求める領域は満たされなかった。

当初、IBF同級世界王者のジェルウイン・アンカハス(25、フィリピン)との統一戦を予定しており契約書まで送ったが逃げられた。だが、仕切りなおしの交渉の中、来年2月24日に米国で開催される「SUPERFLY2」でアンカハスとの統一戦実現にこぎつけた。年末からは、中1か月半のスパンしかないため、この年末決戦は“前哨戦”と位置づけ、対戦相手は、格下の31連勝中のフランス人に落ち着いていた。しかし、事態は急転、アンカハスは「SUPERFLY2」を主催するHBOのライバル局のESPNと放映契約を結ぶトップランク社の所属となり統一戦が流れ、米国再上陸を断念。なんとも中ぶらりんの気持ちでスーパーフライ最終戦を迎えることになったのである。本来ならば、モチベーション維持が難しいところだが、井上尚は、最高のコンディションに仕上げてきた。
「練習が安定している。量や質を考えながらベストコンディションに調整できるようになってきたから」
 今回のスパーリング数は44ラウンド。数年前に比べて半数の量だ。
 父で専属トレーナーの真吾氏は「スタミナは確認済みだから練習の中で故障しないことが大事になってくる」と、その経験と共に変化してきた調整法の狙いを説明した。

 10月に第一子となる長男が生まれ、奥さんが小さな赤ちゃんを大事そうに抱えて観客席から見守っていた。実家に預けることが多く、井上がお風呂に入れることができたのは、数日だったというが、その心境に変化はあった。
「基本、僕は誰のために戦うわけではない。自分のため、強くなるため。そこは変わっていないが、家族が増えたことで、負けられないという気持ちは出てきた。子供がボクシングがわかる年になっても強いお父さんでいたいと」
 強い相手と戦えぬ心の隙は新しい命が補ってくれていた。