拳四朗は笑って倒したが、実はアクシデントを乗り越えていた(写真・山口裕朗)

プロボクシングのダブル世界戦が30日、横浜文化体育館で行われWBC世界ライトフライ級王者の拳四朗(25、BMB)は同級11位のヒルベルト・ペドロサ(25、パナマ)に4回1分12秒TKO勝ち、インパクトのある勝ち方でV2に成功した。

 ちょっとフォロワー数を確認していいっすか?
 記者会見が終わるのを待ちきれないように拳四朗はスマホが置いている場所へ走った。
「増えたのは200か、そんなもんか」
 気になったのはインスタ、ツイッターなど自身のSNSのフォロワー数。
 インスタは、2780が3033、ツイッターは2851が3030。たいして増えていない。
 全国ネットの生中継でTKO勝利してフォロワー数も一気に1万を突破する予定だったが、そのもくろみが外れて無邪気に笑う。現代っ子のくくりでいいものか。つい、ほんのさっき、リング上で殺戮のTKO勝利を演じたボクサーには思えないのである。

 父でありジムの会長である元東洋、日本王者の寺地永氏が「実力差がありすぎた」と笑うほど、パナマから来た刺客に何もさせなかった。
「リーチ差があるのでジャブをついていこう」
 陣営の指示に従って1ラウンドは慎重にスピードと威力に溢れる左のジャブから入った。

 それが伏線になっていた。

「あのラウンドで1、2発ジャブをもらって目が見えなくなった」
 
 試合後の挑戦者ペドロサの回想。実は強烈なダメージを与えていたのである。
「パナマにベルトを持って帰る」と意気込むペドロさはパンチを振り回して前へ出る勢いはあったが、拳四朗が、ステップバックで外せる程度。

「力の差はすぐわかった。予想していたよりプレッシャーもなかった」

 4ラウンド。右フックがカウンターになった。ぐらっぐらっとロープまで後退させると、「今なら北斗百裂拳いけるかも」と、余裕を持って猛ラッシュをかけた。

 試合前、劇画「北斗の拳」の秘技「北斗百裂拳」をほうふつさせる「連打で倒したい」と宣言していた。真剣に北斗の拳を読んだことはなかったが、なんとなく秘技の名前くらいは知っていた。話題作りもあって父が命名したケンシロウの世界を表現してみたかったのである。

 勝負を決めにいく連打で見せ場は作ったが、クリンチに逃げられる。

「連打で上を気にしていたので下が空いた」

 冷静に左のボディブロー。パナマからきた“部族の長”が腰から落ちると、そこにアッパーをお見舞いした。しゃがみこんだペドロサの目はうつろだった。なんとか立ち上がってきたが、再びボディにパンチを集めると、ガードを固めたまま、寄りかかったロープにずり落ちるかのように腰を落とした。

「右ストレートでめまいがした。何もできなかった」

 ペドロサは完敗を吐露。

 V2に成功した拳四朗は、「KOで勝ちたかったのでほっとした。パンチをもらわなかったので口も切っていない。何でも食べれますよ」と、周囲をなごませた。