総務省が発表した昨年11月の完全失業率は2.7%と24年ぶりの低水準となりました。失業率が下がると賃金が上昇し、物価も上がるというのが経済学の常識ですが、日本ではそうなっていません。これはどうしてなのでしょうか。

失業率が下がっても物価上昇は限定的

写真:つのだよしお/アフロ

 日本の失業率はリーマンショック前後に5%台まで上昇しましたが、その後は一貫して低下し続けています。2.7%というのはバブル末期以来の数字です。このところ世界景気が上昇基調にあることから、国内の景気も拡大していますが、さすがにバブル期のような好景気でないことは誰の目にも明らかです。このような状態であるにもかかわらず失業率が一貫して低下しているのは、当然のことながら人手不足が原因です。

 2000年以降、34歳以下の人口は2割も減りましたが、逆に高齢者の人口は4割以上増加しています。高齢者は生産活動には従事しませんが、消費者であることには変わりありません。企業はこれまでと同じ生産を維持する必要がありますが、生産に従事する労働者数は減る一方です。結果として企業の人手不足が深刻になり、失業率が低下するわけです。

 一般的に経済学の常識では失業率が低下すると賃金が上昇し、その結果、物価も上昇するとされています。しかし日本では失業率がこれだけ下がっても賃金は上がっていません。また、物価上昇も限定的となっています。

 日本で賃金が上昇しない要因のひとつとして指摘されているのが、終身雇用制度です。企業は従業員の雇用を半永久的に保障する必要があるため、できるだけ賃金を抑制しようとします。日本企業で長時間残業が多いのも、繁忙期においても人を増やさず、残業で乗り切る必要があったからです。

 女性の社会進出が遅れていることも、賃金が上がらない要因のひとつと言われています。日本の場合、男性と女性の賃金格差や正社員と非正規社員の賃金格差が極めて大きいという特徴があります。結婚や出産を機に労働市場から退出する人も少なくありませんが、こうした女性が労働復帰した場合、非正規社員になることが多くなります。結果として給料は下がりますから、これが賃金を引き下げる要因となります。

 こうした事情から日本では半永久的にデフレが続くと主張する識者もいますが、歴史を遡ると必ずしもそうとはいえません。失業率と物価の関係を見ると、日本でも失業率が2.5%を切ると、急激に物価が上昇するという現象が見られます。オイルショックという特殊要因はありましたが、1970年代の物価上昇は激しいものがありました。

 経済学の常識が通用するなら、失業率が下がればいつかはインフレになります。そのタイミングがそろそろ近づいているのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)