WBA王者の田口良一(右)はIBF王者のメリンドを3-0判定で下して国内3人目の統一王者になった(写真・山口裕朗)

プロボクシングのトリプル世界戦が大晦日、東京・大田区総合体育館で行われ、注目の統一戦は、WBA世界ライトフライ級王者の田口良一(31、ワタナベ)がIBF同級王者のミラン・メリンド(29、フィリピン)を3―0の判定で下し、2団体統一王者となった。国内では井岡一翔(井岡)、高山勝成に続く史上3人目となる快挙だった。

 ジャブは世界を制す。
 元3階級制覇王者、八重樫東を1ラウンドに葬ったメリンドの鋭く早い踏み込みと同時に放たれる上下のコンビネーション。序盤、それを止められなかった田口は、左のジャブに活路を求めた。だが、そのジャブを3人のジャッジが支持してくれているか、どうかは試合が終わるまでわからなかった。
 石原雄太トレーナーも「もしかしたら」を考えた。
 頭をカットし、流血状態でコーナーに戻った9ラウンドのインターバル。
 石原トレーナーが檄を飛ばした。
「このままなら負ける。あと3つとらないと、やばいぞ!」
 田口も「確実にとっているラウンドは少ないかも」と感じていた。
 その言葉に奮起した。
 前へ。左フックがメリンドのテンプルを襲った。IBF王者は、がくっとヒザを落とした。
「心理戦だった。その中で、あのセコンドのハッパが勝因だったと思う。セコンドの声を冷静に聞けて落ち着いて対処できたことが大きかった。世界戦を7度戦ってきた経験だった」
 最終ラウンドは、血だらけのメリンドをグロッギー寸前にまで追い込んだ。ダウンこそ奪えなかったが、田口は応援席に向かって両手を突き上げた。

 採点結果が読み上げられた。「116-112、117-111、117-111」。3-0の判定勝利だった。ジャッジは、田口のジャブをしっかりと評価してくれていたのである。

「2つのベルトが感慨深い。ボクシングひと筋で良かったと思う」

 いいスピーチだった。

「ほっとしている。内山先輩が引退してジムを自分が引っ張らなければという思いも、なんとしても統一王者にならなければの思いもあった。実力は拮抗しているので気持ちと気持ちの戦いだと思っていた。最後はKOできると思ったけど、内山先輩のようにはいかない。もっと早くいければ、KOチャンスもあったのに」

 引退した元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志氏は、「3ラウンドを見てメリンドは後半落ちると思った。スタミナ勝負なら田口のペースになると見ていた。田口はメンタルが強くなっている」と、後輩の戦いぶりを称え「そう簡単にKOはできないからね」とかばった。

 敗者の前IBF王者は「判定は神の意志」とスコアに文句はつけなかった。
そして「田口は優れたアグレッシブなボクサーだった。ビッグハートをもっていた」と潔かった。

 田口は、「7度目の防衛を果たしたら10度目の防衛を狙いたい」と語っていた。11度連続防衛の内山、そして前WBC世界バンタム級王者の山中慎介(帝拳)も果たせなかった具志堅用高氏の持つ世界王座の13度連続防衛の日本記録更新へ「10度できれば、そこからはひとつひとつ積み重ねたい」という野望を隠さない。

 だが、統一王者となった田口の先には、さらに厳しい試練が待っている。
実は、IBF同級王者のメリンドはヘッキー・ブドラー(南ア)との再戦を命じられており、今回の統一戦を行うに際して「勝者がブドラーと指名試合を行う」という条件をつけられていたのだ。
 田口は次戦でメリンドが大苦戦したブトラーと、まずはIBFタイトルの防衛戦を行わねばならない。だが、これは、あくまでもIBF側の条件のため、WBAとの統一王座の防衛戦にはならないと見られている。
 WBAはWBAで指名試合が待っていて、1年前の大晦日で辛くも引き分け防衛した相手、カルロス・カニサレス(ベネズエラ)と再戦しなければならない。
 「今、自分が強いんだ、という気持ちが出てきている」
 2つのベルトを肩に下げた田口なら試練の2連戦も簡単に突破するのかもしれない。