4年ぶりに往路を制した東洋大。5区でもリードを守った田中が歓喜のゴール(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

青学大、東海大、神奈川大の“3強対決”と予想されていた第94回箱根駅伝の往路を制したのは伏兵・東洋大だった。エントリー上位10名の平均タイムは5000mが8位(14分04秒85)、1万mが6位(29分08秒36)、ハーフが11位(1時間3分57秒)。鉄紺軍団は格上のチームに真っ向勝負を挑み、1区から箱根路を席巻した。

「駅伝」は各区間タイムの合計で順位が決まる。

 いわば“足し算”の戦いだが、東洋大は“掛け算”に近いかたちに持ち込んだ。選手たちは「1秒を削りだせ!」というチームスローガンを走りで体現。勝負どころでは一気に仕掛けて、ライバル校たちの戦意をそぎおとしていく。その積み重ねが、4年ぶりの往路Vへつながった。

 往路には3人のルーキーを起用した。まずは日本インカレ1万m日本人トップの西山和弥(1年)が1区で絶好のスタートを切る。17kmで青学大・鈴木塁人(2年)がペースを上げると、集団がバラついたすきにスパート。後続に14秒、青学大に25秒という差をつけてトップ中継を果たした。

 2区相澤晃(2年)は28秒遅れで走り出した神奈川大・鈴木健吾(4年)に追いつかれることを想定していたが、「西山が飛び出したのをテレビで観て、自分も前半から攻めて、後ろにつかせない走りをしました」と積極的なレースを展開する。トップを悠々と独走して、個人記録は横浜駅前(8.2km地点)で鈴木と同タイム。権太坂(15.2km地点)はトップと快走した。3秒差で区間賞は逃したものの、目標タイム(1時間8分00秒)を大きく上回る1時間7分18秒で走破。2位に浮上した青学大と22秒差で3区にタスキをつなぐ。神奈川大と東海大を引き離して、両校の往路Vの希望を摘み取った。

東洋大は36秒差で2位につけている青学大を復路でも突き放すことができるのか?

 東洋大の3区は山本修二(3年)。酒井俊幸監督は青学大のエース田村和希(4年)とのマッチアップに勝負をかけていた。山本は前回2区(区間11位)を経験しており、今回は5区の準備を進めていた。しかし、田中龍誠(1年)を5区で起用できるメドがついたため、12月25日頃にエースの3区投入を決めたという。

「山本はどの区間でも走れるタイプの選手で、単独で走るのも得意です。当初は2区と5区を考えていたんですけど、青学大のエースにぶつけて勝たないと勝算はないと思っていました。エース対決で勝つとチームに勢いが出ますし、相手は焦ります。それに青学大は5区神野(大地/現・コニカミノルタ)が逆転したとき以外は、3区終了時でトップに立っています。3区に山本をぶつけて今回は主導権を握りたいと思っていました」

 そして酒井監督は背後の運営管理車から聞こえる原晋監督の「最初の1kmはゆっくりでいいぞ」という声を聞いて、ひそかに喜んだ。

 一度も並ばれることなく、自信のある後半で引き離すことができると思ったからだ。
 山本も「余裕を持って走るのではなく、最初から突き放すような走りを心がけました」と攻め込んだ。遊行寺坂(5.4km地点)で12秒差まで詰められたが、その後約10kmは寄せ付けない。逆に終盤は突き放した。

 出雲(3区)と全日本(4区)は区間2位に終わった山本が“エース対決”を制して悲願の区間賞をゲット。青学大とのリードを46秒差に広げて、チームに勇気をもたらした。

 僅差のスタートになると思っていた4区吉川洋次(1年)にとっては走りやすい状況になったが、酒井監督は攻撃の手を緩めない。追いかける側のモチベーションを少しでも壊そうと、最初の1kmをハイペースで入るように指示した。全日本8区で区間4位と奮闘した吉川は指示通りに走ると、その後はコンスタントにペースを刻み、区間2位と快走。青学大をさらに引き離した。

 4区終了時で2位青学大とは2分03秒差。5区田中龍誠(1年)は初の学生駅伝で不安もあったというが、「落ち着いて走れるのが最大の武器」(酒井監督)というルーキーが区間9位と健闘する。青学大に詰められながらも、36秒差で逃げ切り往路Vを奪い取った。