[画像]トヨタがカムリでデビューさせた最新のハイブリッドユニット。エンジンの排気量は2487cc。速く静かで燃費も良い。最大熱効率41%を実現させながらそのフィールは立派

 電気自動車(EV)をめぐって、日本の自動車メーカーの出遅れを指摘する声があります。表面的にはネガティブな状況に見えるかもしれませんが、しかし、今後のクルマ業界のスタンダードになり得るいくつもの先進的な技術を日本メーカーは開発しています。モータージャーナリストの池田直渡氏が3つの技術を紹介します。

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「日本のガラパゴス化」は見立て違い

 経済系のライターの人がここのところ念仏のように繰り返しているのは「電気自動車になれば部品点数が1/3になって、新規参入がたやすくなる。コモディティ化によって既存の自動車メーカーは苦境に立たされる」という話。ついでに「サプライチェーンが壊れることを恐れてエンジンに固執した日本はガラパゴス化する」と付け加えられることもある。

 これは家電において垂直統合型ビジネスが水平分業的ビジネスにとって代わった話を一般化した単純な論法だ。そもそも垂直統合が「旧」で水平分業が「新」という単純化がおかしい。その伝で行くと、新幹線も運行システムと車両技術を無関係に開発した方が良いことになる。要するに先例を無秩序に他のケースに当てはめているだけのことだ。

 残念ながら5年後に世界のEVのシェアが10%(約1000万台)を越えている確率は0%だろう。未解決の問題が山積しており、そういう現実を丁寧に見ずして、机の上だけで考えても意味がない。

[図]マツダが2007年に予測したクルマの動力機関の推移予想。8年経過した今、その予測通りの推移になっている。2035年においてもエンジンは8割のクルマに搭載される

 日産リーフのような純粋な電気自動車をバッテリー電気自動車(BEV)と呼ぶ。BEVに求められるバッテリーの容量はハイブリッド(HV)の10倍は超える。そういう大容量のEV用電池を1000万台分作れるメーカーはない。1社で、ということではなく、バッテリーメーカーの総計をしてもそれだけの生産量は確保できないのだ。

 生産設備だけでなく、希土類や希金属などの原料も足りない。ここしばらく中国で希土類の採掘が加速していたのは環境を無視した採掘方法で構わず掘っていたからで、無理がたたって環境が悪化し、今やそんな方法では採掘できない。その上、肝心のエネルギー源たるインフラ電力が足りない。

 バッテリーをどこのメーカーがどの程度供給できるのか。そしてそのバッテリー生産を支える原材料の確保と廃棄時のリサイクルをどうするのか? さらにEVが夜間のほぼ同じ時間に集中的に充電を始めた時、膨大な電力をどうやって発電し、どうやって送電するのか? その現実的な話に対する合理的な説明を見たことがない。現実を無視した無責任な理想論に過ぎない。

 確かに、世の中の方向性は緩やかにEVに向かっていくだろうが、おそらく2030年時点でもBEVの比率をグローバルで10%に乗せるのは相当難しい。2040年でも1/3には届くとは考えにくい。

 もちろん、例え5%でも他社にシェアを食われたら痛手である。だから自動車メーカー各社はその時代に備えてはいるが、この手の話のそもそもの見立てがここ10年レベルでの「内燃機関の終了→EV全盛」という話だから苦笑せざるを得ない。内燃機関の滅亡をゴールとするならば、最速でもこれから50年くらいかけて緩やかに進んでいく話だ。