情報や物流面で都市と地方の格差というものはなくなった。でも、経済的格差、人口減で崩壊するインフラ。生活習慣の齟齬など、いざ住もうと思えば問題は山積みだ。

伊那谷楽園紀行・住みたくなる<人々>を求めて

伊那谷の春(ペイレスイメージズ/アフロ)

 気候ひとつをとっても、夏に訪れて過ごしやすさを感じる土地は、冬ともなれば当然極寒である。長野県のある地域の人に「もし、移住するなら、まず真冬に住んでみないと」といわれたことがある。南国であれば、真夏の太陽に耐えることができるかも、忘れてはならない要素になるだろう。

 既にバブル崩壊からでも20年が過ぎ、30年が経とうとしている。その間に、地方に移住した人が遭遇した村八分をはじめ、ネガティブな失敗の数々は無数に出てきた。2017年の3月に、ある個人ブログに掲載された「私が地域おこし協力隊を辞めた理由」というタイトルの記事が話題になった。そこに綴られていたのは、自身が協力隊として立ち上げた企画が、いかに地域の行政などに邪魔されたかという怒りの告発だった。

 ちょうどその直後に、有楽町駅前の交通会館にある各都道府県が移住窓口の担当者を常駐させている「ふるさと回帰支援センター」を訪れる機会があった。居合わせた和歌山県の担当者と話をしている中で、そのブログの話題を振ると、さっと顔を曇らせて呟いた。

「やはり1年目は人間関係づくりから始めないと……」

 さらに話を聞いていると「人間関係で躓いて、移住に失敗する人は多いんですよね」ともいう。そんな事例は全国のあちこちで、起こっている。それでも地方へと移住していく人の数は減らない。

 千葉県船橋市よりも人口の少ない鳥取県では、県内の移住者数は右肩上がりだ。2011年に504人だった移住者は2016年には2022人に増加。県では2019年までの目標移住者数を6000人から8000人に上方修正をしている(『読売新聞』2017年11月7日付大阪朝刊)。

 山梨県が東京に開設しているUターン・Iターン相談窓口では2017年の相談件数が前年度から約54%増となっている(『山梨日日新聞』2017年12月5日付)。

 こうして見ると、地方への移住という興味は、もはやブームを過ぎて、ひとつの人生の選択肢として成立していることがわかる。