写真提供:ペイレスイメージズ/アフロ

 日本株、米国株を筆頭に世界の株式は2018年に好調な滑り出しを遂げましたが、景気循環の観点からは “これ以上”が期待しにくい状況にあります。世界の景気循環を把握する際、最重要視すべきは米国経済です。米国経済は2009年6月に景気後退が終了して以降、2018年7月で景気拡張10年目への突入が確実視されるなど息の長い成長軌道にありますが、さすがに足元では景気のピークアウトを意識させる兆候が認められており、市場関係者の注目も高まりつつあります。

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景気のピークアウトを意識させる兆候とは?

 その最たるものは、米国金利の長短金利差が縮小傾向にあることです。米連邦準備制度(FRB)の断続的な政策金利引き上げにもかかわらず、長期金利(10年金利)が低位で安定しており、今や2年金利と10年金利の差は50bp、5年金利と10年金利のそれは20bp近傍まで縮小し、短いゾーンの金利と長いゾーンの金利が逆転する“逆イールド”が視野に入る水準にあります。一般的に逆イールドは利上げサイクルの終盤で観察される現象で、それは景気拡大期の最終段階に概ね一致します。

 今回の長短金利差縮小は、FRBが2012年から政策金利の見通しを公表していることなどから政策金利の予見可能性が高まっているため、過去の局面に比べて長期金利が抑制されており(≒タームプレミアムの低下)、長短金利差が縮小し易いという特有の事情はあります。また、米国が金融引き締めに転じた一方で、欧州中央銀行(ECB)と日銀が大規模な金融緩和を継続していることから、その副次的効果として米長期金利が抑制されているという過去との相違点もあります。

 この点を重視すれば例外扱いも可能ではあります。しかしながら、それでも過去3回の景気後退期において何れもその2年ほど前に逆イールドが観察されていたことは軽視すべきではないでしょう。失業率が4%近傍まで低下するなど、経済の伸びシロが縮小している現状において、市場参加者が景気のピークアウトに備えたポジション構築を進めている可能性は意識しておきたいところです。逆イールドが発生したからといって、それが原因で景気後退が訪れるということではありませんが、そのこと自体が人々に景気後退の到来を意識させることは考えられます。そうなれば、企業が設備投資を抑制したり、家計が貯蓄率を高める(≒消費を絞る)ことを通じて経済活動が鈍化し始める可能性があります。冒頭で触れたとおり、景気循環の観点からは “これ以上”が期待しにくい状況にあることを認識しておく必要があるでしょう。

長期金利差

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

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