副業の容認をめぐって経済界が揺れています。政府は副業を推進していく方向性に舵を切り、ガイドラインの策定に乗り出していますが、経団連は慎重な姿勢を見せています。

ペイレスイメージズ/アフロ

 労働者がどのような働き方をするのかについては、本来、企業と労働者が自主的に決めていくべきものといえます。しかし日本では従来から続く慣行を継続する傾向が強く、新しい労働環境を自主的に整備しようという企業は少数派です。このため政府が雇用契約に関するガイドラインを策定し、上からの改革として副業を容認する方向に舵を切りました。

 こうした動きを受けて経団連も副業を容認する方向性と思われましたが、経団連の榊原定征会長は「旗を振って推進する立場ではない」と発言。経済界としては副業を推奨せず、個々の企業の判断に任せるという方針を明確にしました。主な理由としては、仕事のパフォーマンス低下や、情報漏洩のリスク、労働時間の管理、雇用保険の負担などが列挙されています。

 すでに一部の企業では副業を容認するケースも出てきていますが、社員の中には副業している人に嫌みを言うなど、ちょっとしたトラブルも発生しているようです。

 副業に対する懸念が生じることには、日本独特の労働環境も影響しているかもしれません。多くの日本企業では、責任の所在や報酬体系を明確化していないため、副業をしているとサボっていると見なされる可能性があります。また法律上、原則として社員を解雇することができませんから、こうした立場を悪用して、本業に支障がでるようなやり方で副業に邁進する人が出てこないとも限りません。

 副業は社員のスキルアップにもつながるため本人にとっても企業にとっても効果が大きい制度ではありますが、それ以前の問題として、会社における社員の働き方や評価について合理的な制度が導入されていないと、副業そのものがうまく機能しない可能性があるわけです。

 榊原氏の発言はこのような状況を危惧したものと考えられますが、経済団体がこうしたスタンスを示してしまうと、せっかく導入に対して多少前向きだった企業も尻込みしてしまうかもしれません。副業容認による弊害が考えられるのであれば、どうすればそれを克服できるのかについて議論した方が社会にとってはるかに有益でしょう。

(The Capital Tribune Japan)