[写真]芥川賞受賞の喜びを語る若竹氏

 第158回芥川賞・直木賞が16日夜、発表され、芥川賞は石井遊佳(ゆうか)氏(54)の「百年泥(ひゃくねんどろ)」と、若竹千佐子氏(63)の「おらおらでひとりいぐも」の2作が、ともに初のノミネートで受賞した。会見した若竹氏は「人生の終盤でこんな晴れがましいことが起こるなんて信じられない」と喜びを爆発させた。

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 若竹氏は、1954年岩手県遠野市生まれで、大学も岩手大教育学部を卒業した。受賞作の「おらおらでひとりいぐも」は、生まれ育った東北の方言で書かれている。「方言は、そこに生きてきた人たちの生活の匂いというか、味わいのある言葉。東北弁に限らず、九州だろうが大阪だろうが、どの言葉でも大好き」。

 選考委員からは、言葉にすごく力があったなどと評価された。「方言で表現することで、本当に私の思いが直接なんのてらいもなく言葉として現れるのだと思う。エネルギーがあるといわれたら、本当にうれしいこと」と素直に喜ぶ。

 候補者資料のプロフィール欄には、「主婦」と書かれている。「本当は社会に出て職業婦人になりたかった」という思いを長年抱き続けてきたが、「だからこそ、さまざまなことを考えていけたのでしょう。どんな世界に生きていても、無駄なことなんて一つもない」と、今は主婦として歩んだ人生を肯定する。

 63歳での受賞は、75歳で第148回芥川賞を受賞した黒田夏子氏に次いで、2番目の高齢。受賞作は「老い」をテーマにするが、「実はこの間、坐骨神経痛になって足が痛くて。まだまだ老いの大変さを本当には知らないと痛切に感じた」と笑う。

 受賞作の主人公は74歳。これは私小説ではないと断った上で、「ずっとおばあさんの小説を書きたいと思っていた。人生のいろいろな経験を経て、妻・親の役割を終えて、自由の立場にいる。そこで何を考えているのか。おばあさんの哲学を書いてみたいというのがテーマ」と意図を語った若竹氏。「これからもどんどん年を取りますが、老いを生きていくということはどういうことかを考えつつ、同時並行で小説を書いていきたい」。

(取材・文:具志堅浩二)