中国が掲げる「一帯一路」構想をどのようにとらえるか ── 。建築家で文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんは前回、日中の歴史や風土の視点から執筆しました。前回の『「一帯一路」と日本の地政学』の続きとして今回は「陸路」と「海路」の観点から、世界の力学の移り変わりとアメリカに対抗する中国の「力」としての「一帯一路」を考えます。

二つの「怒り」

2018年新年早々、トランプ政権の暴露本『炎と怒り(原題Fire and Fury)』発売 が話題になった=2018年1月11日撮影(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ政権の暴露本『炎と怒り』が話題になっている。

 原題は『Fire and Fury』、トランプ大統領が北朝鮮に対して発した言葉で、もとは聖書だともいう。しかし筆者(若山)はウィリアム・フォークナーの小説『The Sound and the Fury』(邦題『響きと怒り』)を思い起こした。これは一押しの文学作品だ。アメリカ文化の風土的な奥深さが理解できる。

 さて逆に、中国の習近平主席はライバルを粛清して求心力を高め、先の共産党大会で「一帯一路」構想を党規約に盛り込んで中国の大義と位置づけた。シルクロードだというから古めかしいが、このインターネット大発展の時代に、電子のネットワークではなく、リアルのネットワークを再活性化しようということか。「一帯」とは「陸路」を示し、「一路」とは「海路」を示す。

 建築の基本は風土であるが、風土から出発した建築様式が高度に発達し、風土を越えて拡大する場合があり、その拡大にも「陸路」と「海路」があるのだ。「前回」では日本の「一帯一路」として「北進論・南進論」を論じたが、ここでは世界史的なスコープから、主としてアメリカと中国の風土的な力を、日本の地政学に位置づけてみよう。

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