アメリカのハワイ州で現地時間13日朝、「弾道ミサイルが発射された」という内容のメッセージが州当局から住民に誤送信された。ハワイ州が導入している警報システムはもともと自然災害に対応するために作られたものであったが、北朝鮮による相次ぐミサイル実験に対応する目的で、昨年7月にハワイに向けて発射されたミサイルなども警報システムの対象にすることを決定。昨年12月には1990年代半ばから停止していたサイレンなどを用いた避難訓練が再開され、非常時には住民のスマートフォンに瞬時に避難を促すメッセージが送信されることも決められた。しかし、ミサイル発射を想定した訓練から約1か月後に、職員によるボタンの押し間違えによって警報システムが作動。誤報であることが正式に発表されるまでに40分弱かかったため、住民らが一時パニックに陥る結果となった。

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「誤報」がSNSで拡散され大きな騒動に

[写真]ミサイル警報は誤報だったと伝えるメッセージ(Splash/アフロ)

 警報は突然発せられた。現地時間13日の午前8時7分、ハワイ州各地で突然ミサイル警報が住民らに対して出された。ミサイルの発射を告げる警報が発せられた際、ハワイ州ではテレビで大学バスケの試合などが放送されていたが、番組が中断される形で「戸外にいる方は速やかに建物に避難してください。建物の中では窓から離れた場所にいてください。車を運転中の方はすぐに道路わきに駐車し、周辺のシェルターに避難してください」という緊急メッセージがテレビ画面に現れた。メッセージは音声でも読み上げられた。同じ内容のメッセージはラジオでも伝えられた。

 ハワイ各地ではサイレン音が鳴り渡ったが、地震や津波といった自然災害の際に用いられるものとは異なる、ミサイルが飛来することを住民に知らせるものが使われていた。

 また、ほぼ同じタイミングでハワイ州の住民にスマホのショートメール経由で警報も送信されている。メッセージは「ハワイに対して弾道ミサイルの脅威。ただちに避難場所を確保してください。これはテストではありません」と書かれており、驚いた住民がメッセージのスクリーンショットを撮り、それをSNSで拡散したため、結果として騒ぎはより大きなものになった。

 ハワイで暮らす多くの人にとって頭の中が真っ白になる瞬間であったことは想像に難くないが、これらの緊急メッセージは全て誤報であり、担当職員のボタンの押し間違えが原因で発生したと州当局は弁明している(実際にはボタンではなく、コンピューター上での間違いクリックが原因とされる)。この職員の氏名などは明かされていないが、ハワイ州緊急事態管理システム(HEMS)の広報担当者は15日、職員が別の部署に配置転換されたことを明かしている。職員のミスに対して内部で対応を行った形になるが、警報が誤りであるとの発表が行われるまでに38分を要したため、HEMSそのものに批判の矛先が向いているのも事実だ。

 もともとハワイ州には自然災害から住民を守るために、町に設置されたサイレン、各家庭のテレビ、車でよく聞かれるラジオ、さらには個人がスマホで確認できるショートメッセージを使って、1人でも多くの住民に警報を届けるためのシステムづくりが試みられてきた。冷戦終結時までは当時のソ連の軍事力の脅威に備えて、ミサイルなどで攻撃を受けた際のサイレンなども用意され、訓練では定期的に使用されていた。しかし、90年代に入ってからは、訓練でも使われることはなくなっていた。

 弾道ミサイルを含む「敵国からの攻撃」に対して、州全体で警報システムを再構築すべきとの声が上がる原因となったのは、北朝鮮による相次ぐ核や弾道ミサイルの実験であった。北朝鮮は昨年7月に2度にわたって大陸間弾道ミサイル「火星14」の打ち上げ実験を実施しているが、それらの実験によって北朝鮮からのミサイルがハワイだけではなく、アメリカ西海岸や中西部までを射程に収めているとの認識が強まった。ハワイ州は昨年7月中旬にハワイに向かって発射されたミサイルを警報システムの対象に戻すことを決定し、その年の12月にシステムのテストも実施している。

 仕組みとしては、日本の「Jアラート(全国瞬時警報システム)」と同類のものであるが、弾道ミサイルの発射を警報で住民に知らせることに関しては、州内でも賛否両論あった模様だ。北朝鮮から発射された弾道ミサイルがハワイに到達するまでの時間は15分以内とされており、「わずかな時間の中で州民に何を指示できるのか」という疑問が住民からは噴出していた。また、州内の観光業界からは、警報システムはミサイルに対する不安を助長させ、結果的に州経済で大きな役割を担ってきた観光業に少なからぬ影響を与えるとの懸念もあった。

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