文化大革命中に破壊されたフィスインスム。本堂が倉庫として使用されたので、難を逃れた。現在は壁が殆ど崩れてしまった=シリンゴル盟・シローンフブートチャガン・ホショー(2016年9月撮影)

 日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第7回

フィスインスムの壁には文化大革命の時のスローガンがモンゴル語と中国語で書かれていた=シリンゴル盟・シローンフブートチャガン・ホショー(2016年9月撮影)

 ある日、私はSNSに流されたある寺の写真に衝撃を受けた。壁が殆どなく、柱と屋根だけが残っている寺だった。いつ崩れて消えてもおかしくなかった。

 あの手この手を使って調べて、やっと寺の名前と場所がわかった。寺の名は「フィスインスム」といった。友人 に案内を頼み、その寺へ向かった。

 途中で「シャンドインスム」という寺に寄り、撮影した。シャンドインスムは、倉庫として利用されていたことで、割と建物が残っていた。その一部はすでに河北省から移住してきた商人に私物化され、今も倉庫として、利用されていた。

 シャンドインスムから道に迷いながら日暮れにやっとフィスインスムを見つけた。壁はほぼ崩れ、柱が残っているだけ。中に入ってみたら文化大革命の時に書かれたモンゴル語と中国語のスローガンがそのまま残されていた。その内容は「人民と軍隊が一丸となれば、天下無敵」という意味だった。

 この寺は破壊されたが、やはり当時の木造建築の技術や彫刻や壁画などが確認できるし、部分的によく残されている。しかし、奥地にあり、観光のメリットがないので、修復は不可能だと思われた。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第7回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。

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